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特性5因子 ~詩人~『経験への開放性』

Artist in Action / Dumbo Arts Center: Art Under the Bridge Festival 2009 / 20090926.10D.54904.P1.L1.BW / SML

  ※特性5因子診断をされていない方は、先に→コチラ←で診断をしてから読むことをおすすめします。

 

『(経験への)開放性』

 このパーソナリティー次元は、五つの因子の中で最も謎めいていると言っていいでしょう。

この次元は、「文化」や、「知性」、あるいは「経験への開放性」など、さまざまに呼ばれています。

余暇活動についての最近の研究によれば、開放性のスコアは、あらゆる種類の文化的、芸術的活動にどれほど関わっているかを強く予測するといいます。

人によっては読書を好み、また人によっては画廊に行くのを好む、ということではない。一方には読書にも画廊にも劇場にも音楽にも熱心な人がおり、他方ではそれらのどれにも大して興味がない人がいる。

あらゆる文化的余暇活動に関わろうとするこの傾向は、ただ一つ、開放性によって予測される。

研究者によっては、この5番目を「知性」として、「複雑な認知的刺激を求め、探ろうとする傾向」として見ています。

この点では、5番目の要素は知能の概念といくぶん似ています。実際に、開放性とIQスコアとの間にはポジティブな相関があります。

しかし、これが単純に「知能」を指しているのではないということを示す、ある特徴があるのです。

だれもが完全に同意できるその特徴とは、開放性の高い人間の典型が、詩人もしくはアーティスト(芸術家)だということである。

多くの研究が示しているように、開放性は、想像力と芸術性を追求する才能とその創作に、とくに関連しているのです。

 

では、詩人、アーティスト(芸術家)とはどういった人物なのでしょうか。

実際に、詩人の「詩」を例に出し、そこから探っていきましょう。これは、アレン・ギンズバーグという詩人が他の詩人と作家たちについて書いた詩です。

 夜の機械仕掛けの中で 星のダイナモへの太古の新生な繋がりに 焦がれて燃えている
天使の頭をしたヒップスターたち

あるものは戦争学者たちに混じって アーカンソーとブレイクの光の悲劇を幻視しつつ
晴れやかでクールな目をして 大学を通り抜けた

あるものはクレイジーなるが故に また頭蓋骨の窓に猥褻な詩を発表したために
アカデミーから追放された

(中略)

あるものは想像力のラムシチューを食らった あるいはバワリー川の泥の水底でカニを消化した…

(中略)

あるものは 一晩中身をゆすり 転がりながら 高邁な呪句を走り書きした それは黄色い朝の中でわけのわからない戯言になっていた

 意味不明な点が多々ありますが、この詩は開放性について多くの洞察を与えてくれます。

第一に目立つのは、(ほとんどの詩に言えることですが)その深く隠喩的な内容です。

例えば、想像力(心の状態)を作り出すのは、知識や経験ではなくラムシチュー(食べ物)と表現しています。
このように、一つの意味領域(心の状態やプロセス)からのアイテムは、まったく異なる領域(食べ物)からのアイテムと自由に交流しているのです。

それはまるで、認知領域をとりまくフィルターなり薄膜なりがふつうよりも少し浸透しやすくできていて、そのために連想がより大きく広くなっているかのようである。

 そして第二に、この詩に描かれた芸術家たちは、社会規範への挑戦(クレイジーなるが故に、アカデミーから追放された)という衝撃的な特徴を持ちます。

芸術家が因習に刃向う象徴であるのは、いつの時代も普遍的な現象である。

この詩を書いた人物自身も、革新主義者として政治に関わっており、時代の慣習と反目していた。

第三に、この詩全体を通して、超自然的信念、霊的感覚といったものが存在します。

「星のダイナモ」とはなんだろうか。どう表現されようと、それは何らかの神秘的な力であり、通常に知覚しうる感覚の論理を超えたところにあるものだ。

そして最後に、ギンズバーグの作品と人生全体に巣食っているのは、精神病という亡霊です。

この詩の中には、全編にわたって、幻覚、現実との接点の喪失、意味のつかめない神秘的な化身などへの言及があふれている。

彼はこれを体験から書いているのだ。

ギンズバーグの母親もまた精神病を患っており、幻聴を経験し、人々が自分を毒殺しようとしていると思い込んでいたのです。

彼のエピソードに見られる多くの特徴は、統合失調症などの精神疾患を暗示しています。最も明らかなのは幻聴であり、“何らかの力”によって脳に信号が送られているとも感じているようで、いずれも精神病患者にきわめてよく見られる症状なのです。

この種の体験は、ギンズバーグだけでなく、多くの詩人や芸術家の伝記にも見出される。

現に、詩人をはじめ芸術家には、精神障害の発生率がきわめて高いです。そしてこの人たちは、開放性の高さではまさしく代表的な存在なのです。

 

上記の四つのテーマ(隠喩的表現、社会規範への挑戦、霊的感覚、精神病)が、開放性の主軸となります。

 

ではまず最初に、精神病について掘り下げていきましょう。

開放性のスコアが高い人は、統合失調型と呼ばれるものにあてはまることが多く、その症状の中でも特に「異常体験」と名付けられた症状グループにあてはまるようです。

異常体験の枠にはまる現象は、幻覚と疑似幻覚(幻聴もしくは、自分が考えていることが声のように聞こえる)、知覚の乱れ(すべてが奇異に見える、あるいは奇異な意味を持つように見える)、神秘的な考え方(超自然的な力、頭を出入りするパワー、テレパシーの感覚)などである。

 そして二つ目に、開放性の高い人物は、この異常体験が自身に生じることにより、霊的感覚や超自然的な信念へと傾倒することへつながると考えられます。

三つ目に、規範への反抗についてですが、開放性のスコアの高い人は、芸術や研究関係の仕事に強く惹かれ、それらを追求するためにしばしば、伝統的で画一的な組織のやり方を避けるようなのです。
そしてそれが、規範への反抗心へと繋がっていくわけです。

四つ目のテーマは、意味の連想の広がり、もしくは隠喩による連想の表現です。
これを説明するのに最適なのが「拡散的思考」課題というものです。

たとえば、用途テストというものがある。回答者は、日常使われている物についてできるだけ多くの用途を考え出さなくてはならない。伝統的な用途はすぐに考え付いてしまうから、もっと普通でない用途を考え出す必要がある。

例えば、
消しゴムなら、四角く切って穴を彫ってサイコロにするとか、消しゴムのカスを長くつなげて人形の首輪にするとか、
鉛筆なら、たくさん繋げて簀子にするとか、芯を抜いてストローにして使うとかです。

開放性のスコアの高い人は、スコアの低い人に比べて、 より多くの用途を考え出すだけでなく、考え出す用途そのものも普通ではない。

 人がある対象について連想するときの、連想の広がりの幅がどれだけ広がるのかを示す指標が、開放性の高さと関わっているのです。

たとえば「サメ」という言葉を読んだあとでは、「海」や「魚」のような単語を読むのはずっと簡単になることが知られています。 (このことは、反応時間の短縮によって実証されています)

脳の中には、関連した意味を束ねるゆるやかなネットワークがあり、そのネットワークの一つが活性化されると、近接した部分にもいくらか活性化が拡散されるのです。そして問題は、その活性化が広がる度合いです。

ある実験では、被験者は三個の組み合わせからなる単語を見せられる。
例えば「蜂、蜜、パン」もしくは「ハシゴ、瓶、猫」のような組み合わせである。

被験者はそれらの異なる単語について、どのくらい意味が近いかを評価した。

そしてその結果は、統合失調型のスコアの高い人(開放性のスコアの高い人)ほど、単語同士の意味を近いものとして評価したのです。

開放性の高い人にとっては、

一つ一つの単語は関連した連想からなる広範な集団を活性化する。

そのとき二番目の単語がその集団(広範な集団!)の中にあるか、あるいはその集団に関連していれば、二つの単語は意味が近いと感じられるわけだ。

逆に、スコアが低い人の場合、連想の集団はもっと狭いので、最初と二番目の単語の意味が隔絶されているように感じる。

これらを踏まえると、開放性とは何なのか、はっきりと説明することができます。

概念や知覚された対象がいずれも、広範な連想集団を活性化するのだとすれば、なぜ異常な信念が生まれるのかも理解できます。

実際には「考え」であるものを聴覚と結びつけることによって、幻聴が生まれる。

意味のない出来事が、そこにいない人物についての考えと結びつければ、テレパシー、もしくは超常現象という考えにたどり着く。

要するに、開放性が低ければ完全に別個のものとして保たれているはずの「異なる領域」の処理の流れは、
開放性が高い人にとっては相互に作用しあい、関連したものとして知覚されるのだ。

幻覚、錯覚、超常的信念はいずれも、この連想の広がりが生み出した効果としてはネガティブな(不要な、もしくは障害になるような)要素ではありますが、
同時にそれらは、言語や視覚、聴覚の分野での創造性にとって強力なエンジンとなるのです。

そしてそれは、まったく新しいものの見方へと飛躍して、新しい果実を生み、あるいは他者の注目を集める。

「創造性によって他者の注目を集める」これが、開放性のポジティブな一面なのでしょう。

事実、開放性のスコアの高い人は、文学やアートなどにおいて注目を集め、社会的関心と、より多くの交配の機会をもたらしているようです。

 

そしてもう一つ、開放性において興味深い“証拠”があります。

それは、意識的な思考では、無意識の「連想の広がり」を抑えられないということです。

ある一組で質問をしたあと、「今の組の内容は無視して、別の組を選べ」という指示課題で、

開放性スコアが高い被験者は、無視するように想定されている情報を抑制できない。

例えば、「○○は、◎◎とは関係ない」と言われたとします。開放性が高い人も、それを意識的に理解することはできます。

しかし、理解しているにも関わらず、無意識に「マル繋がりだ」などといった連想集団に組み込んでしまうのです。そういった連想の広がりを意識的に抑制することができないわけです。

これは、僕自身にとって、とても納得のいくことでした。

なぜなら僕は、心霊や超常現象などをまったく信じていないにも関わらず、それらの体験をしているからです。

心霊体験、白昼夢などは自分の脳が作り出した幻覚なのだという知識を得て、その科学的メカニズムを理解していても尚、そういった幻覚を抑えることができないのです。

信じていないにも関わらず、はっきりと幻覚(いわゆる幽霊)が見えるというのは、とても奇妙なものです。

(こういった話題になると「それは、幽霊は実在するということなのではないか?」と言われることがありますが、その議論に終わりは無いのでやめときます。笑)

 

さて、まとめると、開放性とは、

(低い開放性の心においては別々に保持されている)さまざまな処理ネットワーク間の、相互作用の大きさ

なのです。

そして高い開放性によるコスト(リスク)は、幻覚や錯覚を生み、精神病への罹患率を高めることであり、
高い開放性による利益は、配偶者選択における強力な武器になり得るということになります。
(低い開放性は、精神病になる恐れはないが、モテる要素のうち少なくとも一つは持ち合わせていないということになる)

 

 

これで、特性5因子、すべての特徴を説明しましたが、人の性格特性を成すものは、もちろんこれだけではありません。

特性5因子は遺伝しますが、遺伝子によって決定されている性格は50%であり、残りの50%は環境によると言われています。

次回はその辺の環境要因の話を交え、まとめていきたいと思います。

 

→次の記事『特性5因子 ~環境がパーソナリティー(性格)へ影響を及ぼすことはない!?』

コラム一覧

 

“特性5因子 ~詩人~『経験への開放性』” への 12 件のフィードバック

  1. 5つのバラメータが全部高い人についてはどのようなことが言えるのでしょうか?

    1. 一概には言えませんが、簡単に説明しますと、

      仕事もきっちりこなし、上司にも部下にも信頼され、
      とても外向的で友達も多く、趣味も多くて芸術性にも富み、人生を謳歌しているように見える。
      だが一方で、人間関係や“生き方”に思い悩むことも多い。

      みたいな感じです。

      詳しくは本を読んでみることをおすすめいたします。
      とても面白い本です(´∀`)

    1. 片柳さん、コメントありがとうございます。

      一概には言えませんが、簡単に説明しますと、

      「仕事で成功したい!お金をもっと稼ぎたい!あいつより上に立ちたい!もっとモテたい!」といった欲求が少なく、「この出会いに感謝!人生ってなんて素晴らしいんだろう!」といった気持ちもあまりありません。
      フェイスブックやインスタはやらず、スポーツマンやアウトドア派ではなく、インドアな傾向にあります。
      ハイテンションになることはあまりなく、たんたんと生きていく感じです。

      詳しくは本を読んでみることをおすすめいたします。
      とても面白い本です(´∀`)

    1. 片柳さん、コメントありがとうございます。

      外向性が低いため、「人生で成功したい!」みたいな上昇志向はあまりありません。高価な車、時計、バッグなどは好みません。フェイスブックやインスタはせず、LINEのグループトークもめんどくさくてほとんど参加しません。ハイテンションになることはなく、マイペースでたんたんと生きていきます。

      神経質傾向が高いため、不安や思い悩むことが多々あります。が、それゆえに勉強はできます。仕事は、上昇志向や自分の仕事以上のことまでガツガツやることはありませんが、失敗を恐れるがゆえ、きちんとミスなくこなしていきます。

      誠実性が低いため、毎日コツコツやって何かを成し遂げることは苦手です。計画を立てても計画通りに行くことは少ないです。一方、臨機応変な対応には優れています。

      調和性が低いため、他人には影響されずに我道を貫けます。一方で、友好関係は比較的狭い傾向にあります。

      開放性が高いため、物事を深く考えることがあります。本をよく読み、一般的にはあまり知られていないような知識もあります。もしかしたら、心霊体験など不思議な経験もしているかもしれません。

      こんな感じです。

      各項目については、記事に全て記載してありますので、今後は記事を熟読していただくと助かります。
      分析結果を書くのは簡単な作業ではありませんので、申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
      m(_ _)m

      ※記事内の分かりづらい点などの質問は受け付けています!

  2. 外向的で同時に調和性の低い人物はなぜ内向的で調和性が低いより問題なのですか

    1. 片柳さん、コメントありがとうございます。

      僕は心理学者ではないので、詳しくは分かりませんが、
      外向的な人は、内向的な人より競争心旺盛です。そして、調和性の低い人は、人が傷つくのをあまり気にしません。
      ということは、外向的で調和性が低いと、人を蹴落とし、傷つけてでも上に立とうとするので、人間関係としては問題になりやすいということだと思います。

  3. 世界の富の80パーセントを保有しようとか拝金方向の異常の信念に開放性は関係しますか

    1. 片柳さん、コメントありがとうございます。

      僕の憶測にすぎませんが、
      開放性が高く、精神異常的な強迫観念にかられたりすれば、異常な拝金主義になることもあるかもしれません。
      でもそれは、外向性の高さも関わっていると思います。

      ぜひ、『パーソナリティーを科学する』の本を熟読してみてください。
      僕の解説よりもずっと詳しく書いてあります。

  4. 初めまして

    なぜ開放性が高いほどモテるのでしょうか?
    開放性が高いのにモテない人も何人か知っています。

    1. スミさん コメントありがとうございます。

      モテる要素は、開放性だけが関わるのではなく、その他の因子(特に外向性や調和性、誠実性など)も大きく関わっています。

      そのため、開放性が高くても、外向性が低くて社交的でなかったり、調和性が低くて空気を読めなかったり、誠実性が低くて約束を守れなかったりしたら、モテないと思います。

      開放性が高いと、人の考えないような発想があったり、注目を集めることが多い分、開放性が低い人よりはモテる要素を持ち合わせています。でもそれは、いくつもあるあくまでモテる要素のうちの1つに過ぎない、ということです。

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