『短時間で劇的に上達する練習法とは?(1/3)』
『短時間で劇的に上達する練習法とは?(2/3)』の続きです。
フィードバックについては、これまでの記事で何度か説明してきたのですが、今回の一連記事に合わせて、もう一度説明することにします。
ここでは、バスケットボールのシュート練習を例にあげましょう。
ここで言うフィードバックは、「シュートした結果を、自分で感じとること」になります。
シュートが右に逸れた、短かった…といった結果を知ることで、「ではもっと○○にしよう」と修正が可能になるわけです。
ちなみにフィードバックが全く無いという状況を上げるとしたら、「目隠しと耳栓をしてシュートを放った」という状況です。
フィードバックが無いと、絶対に上達しないことが分かるでしょう。
では、そういった観点から、「シュートする位置を一回一回変える」という練習を分析してみます。
まず、フリースローラインからシュートを打ち、その後、スリーポイントラインからシュートを打つとします。
ここで変化するのは距離のみですが、必要となる能力は主に二つです。それは、
「距離感の予測能力」と、「予測した通りにシュートを打つ身体能力」です。
この二つがある時点で、シュートが入ったとしても、
「距離感を短く予測したが、予測よりもシュートを強く打ったために入った」
「距離感を長く予測したが、予測よりも短くシュートを打ったために入った」
「距離感の予測が正確で、予測通りにシュートを打つことができて入った」という3つが考えられるのです。
つまりシュートが入ったとしても、どこかが間違っているケースが少なからずあるわけです。
さらに失敗したときは、距離感の予測が誤っていたのか、シュートを打つ強さが誤っていたのか、その両方なのかが分からないのです。
これが、フィードバックが正しく得られていない状況です。
つまり、似ているけど状況が少し違う練習というのは、正確なフィードバックが得られにくいのです。
入っても、外れても、何が良くて、何が悪いのか分からない練習をしていては、上達が遅くなるのも当然です。
そうならないためにも、全く同じ位置から、できるだけ同じ姿勢で、ほとんど同じボールの軌道でシュートが決まるよう、繰り返し練習した方がよいのです。桜木花道のように。
これでしたら、フィードバックもほぼ正確に得られることになります。
そうやって一つのシュートを的確に練習することで、そのシュートは短期間でかなり上達することでしょう。そしてさらに、学習の転移によって、他の位置からのシュートもすぐに上達することでしょう。
ちなみに僕は、ゴルフの練習場には、基本的に1本のクラブしか持っていきません。これは記憶の干渉を防ぎ、正しいフィードバックを得て、スイングをしっかりと確立するためです。
毎日練習に行くとしても、
色んなクラブで打ち分ける練習をするのは2週間に1回くらいです。
そしてその日は、クラブを打ち分ける練習の日なので、本番のように一球ずつクラブを変え、本番のように素振りをして、「打ち直しはできない」という気持ちで練習しています。
スポーツ現場でよくある誤りは、「応用力を身につけるために、色んな技能を、さまざまな状況で練習する」というものです。
これは一見正しいようですが、応用力というのは、複数を同時に学んで身に付くものではありません。
一つ一つの基本的な技能をしっかりと身につけるからこそ、現れてくる付随品のようなものです。
そして基本的技能が高まれば高まるほど、応用の幅を広げることができるのも、学習の転移の特徴なのです。
何でも上手くこなす人がいますが、そういう人はほとんど、「一つのことを突き詰めるこだわり屋さん」だったりします。
同じ事を何度も何度も繰り返すような頑固さがあり、色んな事を同時に練習しているわけではないんですよね。
(元サッカー選手の中田英寿選手が中学生の頃、「同じパスだけをひたすら練習していた」というエピソードが好きです)
とても長くなってしまいましたが、最後におさらいをします。
リフティングがなかなか上達しないのは、似ているけど違うキックをたくさんしているからでした。
複数のキックを同時に練習をしてしまうと、フィードバックが得られにくく、かつ記憶の干渉によって、どのキックも学習しにくくなります。
そこで、スモール・ステップ法に習い、一つずつ分解して練習していき、
ある程度上達してから他のキックも練習することで、学習の転移によりさまざまなキックの上達が早まり、応用力も身に付く。
たったこれだけを言いたいがために、ずいぶん長くなったものです(笑)
スポーツだけでなく、
ピアノやギターでも、完成度が低いまま何曲も練習するより、一曲を完璧にマスターする方が、その後の伸びが違ってきます。
勉強においても、5冊の参考書を一回ずつやるより、1冊の参考書を5回やる方が成績が上がることが知られています。
何でもそうなのですね。できれば中学生くらいの時にこの事実を知りたかった!
さて次回は、具体的なリフティング練習の手順を紹介しながら、記憶の干渉を防ぐ方法、やる気と上達の関係、やる気を引き出す方法を説明していきます。
星名先生。
「2万で足りるのか?」
という桜木花道の名言を思い出しました(笑)。
私も常々、フィードバックに関しては考えているところであります。
例えばこちらにコメントを書いていることも私の「フィードバック」にあたります。
と、同時に星名先生にとってもフィードバックにもなってるし
これを読んでくれているあなたにとってもフィードバックになると思っています。
一石三鳥。
フィードバックは日本語で言うと、どうなりますかねぇ…
「反省」とか「反証」とか「反応」とかでしょうか。
少しマイナスのイメージがあるのは私だけでないはず…。
いい言葉がありました。
「手応え」
>1 打ったり突いたりしたときなどに手にかえってくる感じ。
「打った瞬間にホームランの―があった」「確かな―」
2 こちらの働きかけに対する好ましい、あるいは確かな反応。
「注意してもさっぱり―がない」kotobankより
このように手応えはあってもなくても感じるもの。
大事なのはなくても『感じる』ということでしょうね。
バスケのシュートが入った時に感じる「手応え」。
外れて感じる「手応え」。
シュートが入れば2ポイント入ります。
外れれば相手の選手にリバウンドを取られてマイナス2ポイントになるかもしれません。
現実的には全く違うことになってしまいますが
そこと「手応え」を一緒に考えてしまうので話がややこしくなってしまいます。
自分の中でしっかり手応えを感じることで次に繋げることができるようになると思いますし、それなくしては成長は望めないのではないでしょうか。
最初のお話でもありましたが、人間はすぐに忘れてしまいます。
それがとても大切な体験であったとしても…。
いつでもフィードバックできるようにメモなりスマホなりを駆使して
常に「フィードバック=手応え」をメモリーできるようにする必要がありそうですね。
神保先生>『手応え』とはうまいこといいますね〜(゚∀゚)
フィードバックは本当に大切ですが、フィードバックが正しく得られていると思い込んでいる部分が多々あるので、それが難しいところです。
自分のフォームを見た事がない人をビデオで撮影して見せてやると、大抵「こんなはずじゃない!」という感想を抱きます。
成功した時の手応えはもちろんですが、失敗した時の「どこがどう違うのか」を、理解するために、フィードバックに重きをおきたいものです。