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理想のフォームなど存在しない⁉︎〜個人差とは何か〜

万人に共通する、理想のフォーム理想のトレーニング法は存在しない。

 

■個人差を知る

僕は学生時代、解剖学を学ぶ上で、教科書のイラストをスケッチしていました。特に骨の絵。

絵を描くのが好きなので描いていたのですが、何度も描いているうちに、教科書を見なくても全ての骨を描けるようになったほどです(今は無理です)

リアルにスケッチするには、細部までよく見ないと描けません。そのせいか、僕は解剖学が得意科目でした。

そしてご献体による解剖実習の際も、たくさんたくさんスケッチしました。

その時にとても驚いたのが、骨の太さ、突起(筋肉が付いている場所)の位置や形、筋肉の付き方まで、ひとりひとり全然違うということです。

 

僕が解剖実習で最も衝撃を受け、学んだのは、“個人差”だったのです。

 

前回の記事で理想の姿勢を語ったばかりですが、“万人に共通する理想の姿勢”も存在しません。

そこには個人差があるからです。

これは、理解しているようで理解し難い事実です。

 

■万人に共通する理想などない

例えば、「ランニングフォームは、足の向きを真っ直ぐにして、腕はこうやって振るのがいい。トレーニング法は〇〇がよい」と、日本代表選手が話したとします。

「僕はその走り方とトレーニング法で日本を制しました!」と。

そう言われると、なんだかそのフォームやトレーニング法が正しいように思えてしまいます。

しかし、例え身近にいる全員が、そのフォームやトレーニング法で記録を伸ばしたとしても、それがあなた個人にとっての理想かどうかは分からないのです。

 

もう一度言います。

 

万人に共通する理想のフォームや、理想のトレーニング法は存在しません。

 

■大腿骨の個人差とは?

その根拠を、大腿骨(だいたいこつ。太もも部分の骨)で説明していきます。
(※別の骨でも良いのですが、僕の1番好きな骨である大腿骨を描きたかったのです)

あいきゃっち

まず、大腿骨には、“捻じれ”があります。股関節の部分から膝関節の部分までの間で捻じれている感じです。

IMG_0207

上図の赤い部分は股関節側青い部分は膝関節側です。そしてこの捻じれの角度には、個人差があります。下図のように↓

IMG_0208

①②③共に、大腿骨の頭の部分(色の濃い部分)は同じ角度で描いていますが、膝関節側(色の薄い部分)の向きが違っています。

これはほとんど生まれつきで、この捻じれは、ストレッチ体操をしたところで直りません。

 

■スポーツにおける理想の大腿骨とは?

では、上の①②③の中で、一般的なスポーツにおける理想の大腿骨はどれでしょうか?

ご想像の通り、物理的・力学的に、②の大腿骨が理想です。

②の人の安定した直立姿勢は、足の向きが下のイラストのようになるでしょう↓

IMG_0209

骨盤の受け皿の軸(赤いライン)と、大腿骨の頭部分の軸(緑のライン)はそろい、②の人にとっては無理のない理想の足の向きです。

そこまではよいのですが、ここから安易に結論を出そうとすると【②の人にとっては】という部分が抜け落ちてしまうのです。

「一般的なスポーツにおける理想の足の向きは、②のような位置だ!」と。だから、みんなその足の向きにするのがいいのだと思えてしまう。

 

これがどれほど短絡的で、個人差を無視していて、さらに一部の人にとって危険な理屈かが想像できるでしょうか。

 

■理想の押しつけによる悪影響とは?

例えば①の大腿骨の人に、足の向きにだけ注目して、先の“理想の足の向き”をさせるとどうなるでしょうか?

IMG_0210

まず大腿骨を外へ開く筋肉に(無駄に)力を入れなければなりません。そして股関節前面の靭帯や筋肉は、引っ張られて緊張し、股関節の安定性は少なからず失われます。

①の人が、この股関節の位置を基準にスポーツを行えば、股関節周辺の靭帯や筋肉に大きな負担がかかること必至です。そしてもちろん、パフォーマンスも落ちます。

試しに、足の指が普段より外を向くように、股関節を開いて立ってみて下さい。走りにくいし、踏ん張りにくいのではないでしょうか。

これは、③の人が、②の足の向きにした時も同様です。

 

■個人差はまさに千差万別

今回、大腿骨の捻じれだけに注目したわけですが、もちろん個人差があるのはそこだけではありません。

足だけで見ても、骨盤、大腿骨、脛骨、腓骨、足根骨から指骨の形状、股関節、膝関節、足首の関節の向きや動き方、筋肉や腱の長さなどは人それぞれです。

全身で考えたら、その組み合わせは無限大です。

 

にもかかわらず、世に広まるのは「これをやれば誰でも強くなれる!」的なものばかりです。

 

なぜそうなってしまうのでしょう?

 

次回はそれについて説明していきます。

 

次の記事『成功者の理論が正しいと感じてしまう心理とは?』

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“理想のフォームなど存在しない⁉︎〜個人差とは何か〜” への 3 件のフィードバック

  1.  私もスポーツをする者としていろいろと調べているのですがブログを拝見して共感しました。
     ハンマー投の室伏選手が独自のトレーニングを行っていたのは有名かと思いますが、それを聞いて「あれだけの選手だから」とか「学者もしていて頭がいいから」なんて感じている人が多いように思います。でも結局はレベルに関わらず自分に合ったトレーニング、ストレッチなどを追及していくことがパフォーマンスの向上には大事だと感じています。それにはまず、”誰でも”や”一般的”と言われるものと自分の体が必ずしもマッチしないこと、またそういったことがしばしばあるということを自覚する必要はあるかと思います。
     そういった点から星名先生の今回のブログはとても意義のある考えだと感じました。

    1. ササオさん、コメントありがとうございます。

      この記事は、かなりの力作なので、そう言っていただけると嬉しいです。

      最近は心理ネタを中心に書いていますが、トレーニングやストレッチに関する情報も投稿していきますので、よろしければまたいらしてください。

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