photo by Internet Archive Book Imag
今回は、前回の続き、
調和性の特性から見た、サイコパスや自閉症、そしてテレパシーについて説明していきます。
まずサイコパス(サイコパシー)についてですが、これは調和性が極端に低い人物の中に見られる精神病質です。
サイコパスとは、完全に自己中心的で、冷酷で、不正直で、愛する能力を欠き、もっぱら自らの目的を達成するために他者を利用する傾向をもつとされる人間なのだそうです。
サイコパスの多くは札付きの犯罪者である。彼らはしばしば人をペテンにかけ、欺き、あるいは巧みに操って、富や名声、もしくは満足を手に入れようとする。
彼らはまた、際立って攻撃的である。ただ、すべての攻撃行動がサイコパシーのサインというわけではない。神経質傾向の高い人もまた、特定の状況のもとでは衝動的に攻撃的になるかもしれない。
攻撃性という点で見ると、神経質傾向の高さも関わってくるようです。
神経質傾向の高い人が攻撃を見せるときは、常に何らかの脅威や挑戦への防衛反応として起こります。そしていったんパニックが静まったあとは、自責や後悔に移っていきます。
これは、妻を虐待する夫によく見られる傾向です。妻の言動や行動が自分にとって脅威となったとき(自尊心を大いに傷つけられたときなど)の自己防衛本能によって攻撃的行動をとり、その激動が収まると、自責の念にかられ妻に泣きながら謝る。などです。
しかしサイコパスの攻撃はこれとは違います。
サイコパスは道具として攻撃を使う。それは自分の利益になる何らかの目的を手に入れるためであり、事前に計画されたものである。
標的とされる相手からの挑発も必要なく、後悔を伴うこともない。彼らにとって、相手が味わう苦痛など、文字通り何の重みももたないのである。
もちろん、調和性の低い人すべてが道徳的に悪いわけではなく、必ずしも敵対的になるわけでもありません。
すでに説明したように、サイコパスは共感の欠如(きわめて低い調和性)が中核となりますが、誠実性と神経質傾向もきわめて低いというのが特徴です。
この三者構成システムのおかげで、ありがたいことに、反社会的行動をとるような人物が出現する可能性を下げているようです。
約、50人に一人が、この三つのうちの一つの「きわめて低い特性」を持っていますが(この割合は、ほぼ正確な推計だそうです)、
三つとも「きわめて低い特性」を持つ可能性は、125000人に一人となります。
(※この三つの要素のうち、神経質傾向がきわめて高いケースにおいても、絶望的な攻撃行動(反社会的行動)へ向かう人々もいる)
このようにサイコパスは、共感能力が欠如しているわけですが、心の理論のもう1つであるメンタライジングは人並みに(またはそれ以上に)持ち合わせているのも特徴です。
「人の心理を読むことは巧みで、共感能力が無い」という点が、詐欺などを行う犯罪者の特性なのでしょう。
そして、「調和性の低さ」はまた、自閉症という問題にも繋がっています。しかし、自閉症とサイコパシーとの間にある決定的な違いは、メンタライジングと共感の区別にあります。
自閉症者にとって他者の心の状態を予測するのは難しいが、他の人が苦しんでいるのを見ると、比較的正常なやり方で生理的に反応する。
つまり彼らはメンタライジングはできないが、他者の苦痛を示すきわめて直接的な証拠をとらえると、たしかに共感するのだ。
これとは逆にサイコパスは、他者の心の状態を予測することにかなり長けている。だからこそ、あれほど効果的に人を操作したり欺いたりできるのである。
彼らはメンタライジングするが、共感はしない。したがって、必要なときに他者の心の状態を類推することはできるけれども、それらは彼らの行動の選択に全く影響をもたないのである。
特性5因子における『調和性』とは、メンタライジングよりも共感のほうにより近いようです。
調和性が低いということは、自閉症と違って、他者の心の状態が解読できないのではない。解読した結果に関心がないだけなのだ。
このように、他者の心の状態に関心を持ち、その結果、「他者の心の状態に合わせて自身の行動が影響を受ける度合い」が、調和性の高さと言えるのでしょう。
これで、調和性とは何か、おおよそ理解できたと思います。
では最後に、テレパシーの話を。
もしも、調和性が極めて高く、特に、メンタライジング能力が桁外れに高いと、どんな感覚になるでしょう?
おそらく、ちょっとした相手の顔色や仕草、口調や息遣いで、その人の心の中が見て取れることでしょう。
そうなれば、「何も話さなくても、相手の考えていることが分かる」ということなど、幾度となく経験することでしょう。
これはまさにテレパシーです。
現に、「自分にはテレパシーがある」という人の多くは、調和性が極めて高いということが分かっています。
もしも、メンタライジング能力が極めて高く、さらに開放性(次回説明します)まで高いとすると、もう自分のことを超能力者だと感じるかもしれません。
そういった特殊なケースでさえ、科学的な説明ができてしまう特性5因子は、本当に興味深いです。
さて次回は、最後の(そして最も特殊な)特性、『経験への開放性』について説明していく予定です。
→次の記事『経験への開放性』へ(作成中。毎週土曜日更新です。)
→ブログ一覧へ
→アーカイブ(主要な記事一覧)へ