photo by Nick Ares
思考癖の直し方(1)~あなたの遺伝子はあなたの幸せなど望んでいない の続きです。
植物でも動物でも、全ての生き物は、生存と生殖を目的として生きています。
前回のネガティブ感情とポジティブ感情の話では、「子孫を残すために生存率を上げる」という目的が主でしたが、
今回は、「子孫を残すために生殖率(繁殖率)を高める」という話になります。
まず、所得と生活満足度の関係を調査した研究を見て下さい。
「所得が上がるほど、生活満足度も上がっていくだろう」という予測のもと、行われた研究調査です。
研究は当初、【所得】と【生活満足度】の関わりを明らかにする目的で始められた。
しかしその後、【所得】より【所得順位】の方が【生活満足度】に関係していることが明らかになった。[C. J. Boyce, G. D.A. Brown, S. C. Moore. (2010)]
ここで言う所得順位は、性別・年齢・教育・居住地域などが同じレベルの人々の集団の中での順位のことです。
つまり、生活満足度は「いくら稼いだか」より「(自分と同じレベルの)周囲と比べていくら稼いだか」の方が重要だったのです。
例えば、前年より年収(所得)が上がったとしても、
同僚の年収がもっと大幅に上がっており、所得順位が低下していたなら、前年より不幸になったと感じてしまうようです。
そして大抵、お金持ちになると、よりお金持ちの人たちとの繋がりができていきます。すると、そういった周りの人たちと自分を比較し、やはり満足度は低下してしまいます。
いくら稼いでも、これはずっと続いていくでしょう。堂々巡りとはこのことです。
こういった「他人と比較する」という比較思考を、進化の観点から考察すると、
「自分の利得を求めるより、他人より勝ることを求める方が、よりよい性的パートナー(恋人)を見つけられる」ということに繋がります。
例えば今、石器時代で生活しているとします。
あなたがウサギを捕らえてきたとすると、あなたの株は上がり、より多くの性的パートナーを得られる可能性が高まったことでしょう。
しかし、隣人がクマを捕らえてきたらどうなるでしょう?
あなたよりその隣人の株が上がり、性的パートナーも隣人へと流れていくでしょう。
(あなたが獲得した獲物の質が低下したわけでもないのに!)
つまり、隣人(ライバル)よりも、魅力的な性的パートナーを多く得るためには、隣人よりも勝ることが重要なのです。
そのため、何かを達成できたり獲得したとしても、それに対し喜びを感じるのは、隣人よりも勝っているときに限られるというわけです。
「地位の高いオスほど、より多くのメスを得られる」というのは、霊長類にとっては当たり前すぎるくらい当たり前のルールです。
僕たちは、隣人と比較し、隣人より上に立つことを望んだ祖先の子孫です。
その比較思考の遺伝子は、確かに受け継がれているのです。
こういった比較思考は、
夢の実現、成功体験、収入、
身体能力、容姿、学歴、
彼氏彼女、友人の数や質(強さや美しさなど)、
TwitterやFacebookなどの友人の数、いいね!の数、ブログのアクセス数、
持っている車や時計、バッグや服の数や質…、などなど、他人と比較できるあらゆものに存在します。
そしてそれらに共通することは、「上には上がいる」ということ。
比較思考にとらわれていると、いつまでたっても現状に満足することができず、持続的な幸せを得ることができないのも事実です。
遺伝子は、本当に、僕たちの幸せなど望んでいないのです。
さて次回は、現状に満足することができない心理の核心に迫ります。
(※この記事は、2012/4/2の記事をリメイクしたものです)
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院長が「成長」という言葉に人と違う反応をしがちなのは今回書かれていることと関係がありそうです。 もっともっと、あいつよりもっと、誰もが羨むくらいにもっと!という原動力では幸せにはなりづらいよね。 「足るを知る」で人と比べずに生きれば全てが手に入るのに。 でも「成長しなきゃダメかね?」というと十中八九、「満足したらそこで終わりじゃん」って返される。 んーー、苦しくなければいいんだけど、自分が苦しんでるかそうでないか、それすらわからない人がほとんどだからね。 向上心はとても素敵だし、そこに強い感情が割り込まないように監視できればね、とてもいいです。
ほんと、こういうことは、とても伝わりにくいことだと思います。
「足るを知る」を「やる気がない」と思われてしまう感じすらします。
「仕事をし、人間関係・社会生活を良好に保ち、あとは夢を持たずに好きなことをする」これが僕の思う幸せな生き方です。
一番ダメなのが、「夢の実現を仕事に求めること」だと考えているのですが、これは本当に理解しがたいようです。向上心が悪いとか、頑張ることが悪いとか言うつもりは全くない(むしろ良いと思う)のですが。
そういったことが、少しでも伝わる記事にしていきたいと思ってます。