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「学ぶ」ということは、「意識的に条件反射を身につける」ということ

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前回の『直観と条件反射~偏見の構築』にて、「何度も経験したことや何度も思考したことは、無意識下の皮質下へと記憶されていき、その記憶によって条件反射(直観)が生じている」と説明しました。

今回は、この条件反射(直観)を、意識的に 身に着けることについて説明していきます。

 

“学ぶ”ということは、条件反射と切っても切れない関係にあります。

自転車に乗れるようになるのも、4×5と聞かれて瞬時に「20!」と答えられるのも、この条件反射が関わっています。

身体の動かし方にしろ勉学の問題にしろ、何度も練習(条件付け)して条件反射が身についているため、その答えを直観で判断できるわけです。(「右にバランスを崩したら重心を左へ…」と考えなくても、無意識にバランスをとることができる。また、4+4+4+4+4を頭の中で計算することをせずに、無意識に答えを導き出せる)

このように大脳皮質(新哺乳類脳)によって意識的に学ばれ、用いられる知識は、直観を生み出す皮質下(旧哺乳類脳、爬虫類脳)へと沈み込むことがあり、「直観」として用いられることがあるのです

ベテランのゴルファーは全員このプロセスを経験している。最初にクラブを手にしたときは、意識的に指示に従う。頭を後ろに引いて、膝を曲げ、左手はまっすぐに。初心者は、これらのポイントのそれぞれについて意識的に、注意深く考える。単にティーの前に立ってスイングすることはできない。しかし、このようなことは、頻繁に十分長い時間行えば、もう考える必要がなくなる。正しいフォームが正しいと感じられ、ずっと速く、流れるようにできるようになる。(『リスクにあなたは騙される―「恐怖」を操る論理』より)

上記の例は、「意識によって、体の動きを直観で制御できるようにする」というものです。

一度や二度意識したところで、それを直観レベルまで落とし込むことはできませんが、何度も何度も繰り返し意識することによって、身体を直観によって動かすことができるようになるわけです。

 

同様に、スポーツにおけるフォームの悪い癖なども、繰り返し意識して練習すれば、直すことは可能です。

ただし、癖を直す上で絶対的に必要な要素が二つあります。

一つ目は『知識』です。どういうフォームがもっとも効率的で強力なのか、その仕組みはどのようになっているのか、それを知らなければ、より良いフォームへと改善することは不可能です。

そして二つ目は、『フィードバック』。フィードバックというのは「ある動作の結果を、動作を行った側に伝える」ということです。(フィードバックについて詳しくはこちら→『ロボットアームを脳だけで動かすサル』

スポーツの現場では、コーチが指摘して伝えたり、鏡やビデオを見ることによってフィードバックを行います。それにより、自分がどんなフォームになっているのか、どこが正しくてどこが誤っているのかを意識的に理解できるようにするわけです。

このフィードバックによって行っていることは、「自分を客観的に見る」ということです。これが二つ目の必須要素となります。

 

つまり、「学ぶ」ということを科学的に説明すると、「知識を得て、自分を客観視しつつ、学びたいことを繰り返し行うこと」となります。それによって意識的に条件反射を身につけることができるのです。

勉学にしろ、スポーツにしろ、性格や思考癖の改善にしろ、脳にしてみればみな同じように学んでいくのです。

 

そして、話が興味深くなるのはここからです(僕の基準ですが)。

 

学ぶときに脳内で起こっていることは、「脳神経細胞が一連の結びつきを持つこと」です。

例えば、ゴルフのスイングをする時の脳内を覗いてみると、脳神経細胞に一連の電気の流れが見られます。その電気信号によって筋肉に指令を出し、身体を動かしているのです。(※冒頭の画像は脳神経細胞であり、複数の脳神経細胞が繋がっているサマが見て取れます。この赤いラインを電気が流れる感じです)

そしてここにはある特徴があります。

スイングをすると、初心者では電気がさまざまな脳神経細胞に流れていき、脳の広い範囲が活動するのですが、熟練者であればあるほど、電気の流れはシンプルになり、脳の活動範囲もほんの少しになるのです。(熟練者の脳はあまり活性化していないようにさえ見える)

こういった熟練による脳内反応は、「森林にて出発点から目的地までできるだけ速く進む」という例で考えてみると、とてもよく理解できます。

あなたは森林で目的地を目指そうと出発点に立っているのですが、目の前には草木が生い茂り、道なんてありません。

あなたは茂みをかきわけ、「あっちかな?こっちかな?」と右往左往しながら、目的地を目指します。そして目的地に到着したら、再び出発点へとテレポーテーションするのです。

二回、三回くらい同じことを繰り返しても、森の景色はどこも同じに見え、「こっちだったかな?いや、あっちかな?」と、前回とは違う道を通ったりして、うまく目的地までたどり着けないでしょう。(つまり、森の広い範囲をうろうろと歩き回ることになる)

しかし、何度も何度も、これを繰り返したらどうなるでしょう?

あなたは、遠回りしたり、たまたまうまく近道ができたり…ということを繰り返しているうちに、徐々に目的地の正確な方角が分かるようになり、少しずつ最短距離を通れるようになってくるでしょう。

そして、何度も同じ道を通っているうちに、あなたが草木をかき分け、踏み固めた”ケモノ道”のような道ができていきます。

こうなるともう簡単。「あっちかな?こっちかな?」などと考えずとも、できた道を走るだけで、素早く目的地に到達できるようになるでしょう。(つまり、森の中の一本道を無意識に素早く進めるようになる)

脳内でも、これと似たような現象が起きているのです。

ゴルフの初心者は、正しい身体の使い方がよく分かりません。それはつまり、脳の電気信号もあちこちへ散らばり、無駄なところに力を入れるように指示を出してしまっているのです。そのためスムーズな身体の動きができません。

一方熟練者は、脳の指令も熟練され、無駄な指令を出すことなく電気信号もシンプルになります。その結果、無駄な力が抜け、スムーズな一連の流れとして身体を動かすことができるのです。

 

初心者から熟練者へと上達するときに脳内で実際に起こっていることは、シナプスの形成と増強、そして抑制です。

脳神経細胞にはたくさんの”手”があるのですが、その手は隣接する脳神経細胞と繋がっており、その繋がっている部分を「シナプス (Synapse)」と言います。

HOW DOES THE BRAIN WORK - VIA - PASSING SIGNALS - ITS CALELD SYNAPSE - BETWEEN AXON AND DENDRRON - FROM SENORY TO MOTOR NERVE - PARSE, PROCESS - TRANSMIT SIGNAL TO TELL WHAT AND HOW TO REACT GIVEN A STIMULI

そして、「一連の動作や思考をすること」は、「ある複数の脳神経細胞間を、シナプスを通じて電気信号が流れていくこと」に等しいのです。

一連の動作や思考を学ぼうとすると、細胞間にシナプス(繋がりの部分)が新たに形成されたり、太く増強されたりします。そうやって最適化された太い電気の通り道ができていきます。

さらに、隣接するあまり使わないシナプスは抑制される(小さくなり、消失していく)ことで、相対的に増強された部分をより際立たせるように形成されていきます。

かくして、何度も繰り返されることにより最適化した「一連の脳神経細胞の繋がり」が強くなり、その部分だけに電気が通りやすくなるのです。

ここで注目してもらいたいのは、「隣接するシナプスは抑制される」ということです。これが起こるから、使う部分がより際立って、電気信号がスムーズに伝わるようになるのです。

これを森林の例で説明するとこういうことになります。

始めのうちは、最短ルートを特定できずに、色んなルートを通っていたため、いくつもの細い道ができていく。が、徐々に最短ルートが分かり、その道を頻繁に通るようになる。

すると、最短ルートがしっかりと踏み固められていく一方で、隣接する別のルートはあまり通らなくなるため、徐々に草木が生え、道がなくなっていく…

こうして、遠回りのルートは草木が生い茂って道が消失していき、最短ルートをより際立ててくれるのです。

 

これが、「学ぶ」ときに脳内で起こっていることのようです。

そして、ここからさらに面白くなるのですが、長くなったので次回説明します。

 

→次の記事『癖とは何か?~癖を直すということ』

→前の記事『直観と条件反射~偏見の構築』

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