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前回の続き、パーソナリティーに影響を及ぼすとされる、進化上の妥当性についてです。
この「進化上の妥当性」を軸に、有力だと思われる環境要因とはどんなものなのでしょうか。
考えられる要因のうち、きわめて重要な意味を持つものは、身体を始めとしてその人のもつさまざまな特徴です。
人が危険を及ぼしうるものに対してどのくらい神経質になるかは、半ばその人の足の速さや、免疫システムの質などによって左右される。
人が危険な報酬を追求するかどうかは、その人物が強くて魅力的かどうかに大きくかかっている。強ければ、事がうまくいかなかった時にも対処できるだろうし、魅力的なら、社会的報酬や性的報酬を手に入れるための大きな鍵となる。
同様に、ある人が問題の解決にまじめに取り組む必要があるかどうかは、その人がどれくらい明敏であるかによる。頭の回転の速い人は移動中の飛行機の中で準備してしまう。
他にいくらでも例を挙げることができる。
いずれにせよ、進化が私たちの中に、それぞれの健康、知能、体格、魅力に合わせてパーソナリティーを調整する能力を作り出したという考えは、きわめて道理にかなっている。
この種の影響を裏付ける証拠はいくつかあります。
第一に、肉体的均整のとれた人は、そうでない人よりも外向性が高いです。
均整のとれた個体は、そうでない個体よりも傾向として健康であり、そのために他者からも明らかに魅力的だと見られます。
外向性を巡る報酬とリスクのバランスを考えると、非常に健康で、他の人から魅力的だと見なされる個体の方が、外向性が高く設定されることはきわめて理にかなっています。
また男性では、体格が大きくなるにつれて、外向性のレベルは高くなります。
多くの男性は「あと数センチでも身長が高ければ…」と望んでいますが、それは他者と競争する際、体格が良い男性の方が生存と繁殖に有利だということを意味しているのです。(女性の場合は、身長は関係ありません。これは、女性は体格を駆使した競争を行わないため)
大規模な調査によって、身長と男性の収入との間にはプラスの関連が見出されています。そして、この調査によると、大人になってからの収入の差を生む変数は、十代のころの身長の高さだったのです。
十代の頃、比較的背が高かった少年は、社交的で運動の得意な若者になり、これが恒久的に彼らをやり手になるように調整したようである。
これを聞くと、身体的特徴も遺伝するのだから、結局は遺伝的要因なのではないのか?と思われるかもしれません。ですが、それは部分的には間違っています。
身長や魅力などの身体的特徴は、完全に遺伝性とは言えないのである。それらはまた、子ども時代の病気や事故のような、時折生じる環境の出来事の影響を受ける。
パーソナリティーの発達は、遺伝性の変異だけでなく、これらの非共有の、そして偶発的な環境的出来事の結果にあわせて補正されていく。
このようにして、子ども時代に遭遇したまったく予測不能な不運な出来事が、大人になってからのパーソナリティーに長期に渡る重要な影響をもちうるのである。
例えば、病気で外見が変わってしまえば外向性が低くなるかもしれませんし、整形(形成)して均整の取れた容姿に生まれ変われば、外向性が高くなるかもしれません。
そういった環境要因も、パーソナリティーを変化させる要因になりえるのです。
さて、ここまでの考察から得られることは、
環境要因は確かに存在するのですが、それらをコントロールすることはとても難しいということです。ある特定の環境要因を与えるにしても、そこには遺伝的要因を基に、予測不能な様々な事象が複雑に絡んでいるのですから。
子育てにおいて、両親の愛情や、しつけ、叱り方、教育、そして友人関係(実は、この友人関係が一番影響を及ぼすとも言われている)が大切なのは、さまざまな調査を通じて明らにされています。
しかし、全く同じ遺伝子をもった子供に、全く同じ状況になるように子育てしたとしても、その結果は決して同一にはなりません。もし僕が、もう一度同じ環境で育ったとしても、全く同じ大人に成長することはないでしょう。
これまで考察してきた他にもさまざまな環境要因はあるだろう。たとえば、成長期の子供が仲間集団の中で占めることができるニッチは、気質メカニズムの微調整に微妙な影響を与えるだろう。
それにしてもこれだけは言える。
遺伝子の影響にせよ、胎児期環境の影響にせよ、出生後の環境の影響にせよ、
それらはすべて、わたしたちが自覚した大人になるよりもずっと前から、自動的に、容赦なく、そして私たちの意志とは明らかに無関係に、それぞれの仕事を果たしてきたのである。
いくら環境を整えても、一個人のパーソナリティーを理想通りに変化させることなど不可能なのです。
これは一部の人たち(自分の、または子どものパーソナリティーを変えたいと願う人たち)にとっては酷な事実かも知れません。しかし、ここからが最も重要なメッセージとなります。
それは、「パーソナリティーを“思い通りに”変えることができなくとも、生き方を変えることはできる」ということです。
次回は、特性5因子の総まとめとして、“生き方を変える”ということについて紹介していきます。
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