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見たい結果を見てしまう心理

Photo by Norio Nomura

みなさんは、「タマムシ色の解釈」という表現をご存知でしょうか?

タマムシって(上画像はタマムシです)、赤にも青にも緑にも見え、見方によっては、何色にも見えます。

なので、「タマムシ色の解釈」というのは、
見ている事実は同じでも、その解釈は人それぞれで、どのような結論でも見出せてしまう、みたいなことです。

うまいこと言いますね。

今回の記事は、そんな話になります。

 

さて、前回も書いた通り、

一度理論が構築されると、「これをやれば誰でも強くなれる!」と、自分の理論に自信を持ちやすくなります
(ここでは主に、スポーツの理論で説明しています)

そんな心理状況について分析してみます。

 

まずは、下の実験を見て下さい。

たくさんの人を2グループに分けて、「試合前日の練習は勝敗に関わるのか?」を検討してもらう、という研究です。

全く同じデータを示して、一方のグループには、試合の前日に練習を行うことが勝利につながりやすいかを、そしてもう一方のグループには、試合の前日に練習を行うことが敗戦を引き起こしやすいかを検討してもらった。

すると、検討結果はグループ間で違った結果となりました。

どちらのグループも、渡したデータは全く同じでしたが、「データのどの部分を重要視したか?」という部分が大きく違っていたのです。

練習と勝利との関係を検討したグループは、練習が勝利に結びついた事例の数を重要視したのに対し、練習と敗戦の関係を検討したグループは、練習が敗戦につながった事例の数を重要視したのである。

『 人間この信じやすきもの―迷信・誤信はどうして生まれるか  』より

つまり、自分が確認したいことを肯定するデータを重要視してしまうのです。

どんな事柄でも、必ず自分の理論と合致するデータというのは存在するので、その合致するデータばかり見て、「やはり自分の理論は正しかった」と、より確信しやすくなります。

 

この心理を知らなかったなら、身の回りの事柄を正しく判断できていない可能性が高いです。

これは錯視と同じようなものですので、知らなかったら修正のしようがありませんから。(下の画像を“錯視”と知らなければ、「AとBは違う色に見えるが、同じ色なのかも?」などと考えることもないでしょう)

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ではもしも、「試合前日に練習することが勝利につながりやすいか」を、きちんと検証したいのであれば、どうすればよいのでしょう?

 

ポイントは2つです。

 

1つ目は、上記の研究結果のように偏らないように、
「前日練習をして勝った試合も、負けた試合も、同じ重要度で検証する」ということです。

当たり前に聞こえるでしょうが、これがかなり難しいのです。

ちなみに、「そんなの当たり前」とか「簡単でしょ」とか考える人ほど、正しく検証できない傾向にあるようです。「これは難しい」ということを理解して、注意深く検証しないと正しく評価することはできないのだそうです。

 

そして2つ目は、さらに難しいです。

それは、前日に練習をして勝ったか負けたか、を調べることだけでなく、
前日に練習をしなくて勝ったか負けたか、も同様に調べる必要があるということです。

勝った負けた

これらA、B、C、D、4つの勝率を検討、評価して初めて、前日の練習が勝敗に影響を及ぼすか?ということが分かってきます。

 

僕の経験上、上記の4つを適正に評価している理論は、ほとんどありません。

ほとんどが、一番見たい部分の1つ(Aの部分)だけ。もしくは2つ(AとBの部分)です。

 

ちょっと考えれば、CやDの部分も同様に検証する必要があると分かるのに。

なぜ、できないのでしょう?

 

それは、二重否定の難しさにあるようです。

例えばあなたが、『前日練習することが勝利につながりやすい』という理論を打ち立てたとします。

「前日練習をして勝った」という試合を見たら、瞬時に「自分は正しかった!」と理解できるでしょう。

しかし、「前日練習しなくて負けた」と言われた時に、その事実が自分の理論を肯定しているのか否定しているのか、またはどちらでもないのかを、瞬時に判断できるでしょうか?

これはちょっと考えないと、理解し難いと思います。
(少なくとも僕は、かなり理解し難い)

 

この、理解しやすいか・し難いか、ということが原因で、めんどくさい部分は省略してしまうのです。無意識に。
それ故に、認知の歪みが生じてしまうのです。

 

 

少しややこしいので、もう少し分かりやすい例で整理してみます。

 

もし、『喫煙しても肺ガンの発症率は上がらない』という理論を打ち立てたなら…

①考えない人
②あまり考えない人
③ちょっと考える人
④しっかり熟慮する人
の順に例を挙げてみます。

 

①喫煙してもガンにならない人を、身の回りで何人か見つけて「やっぱり自分は正しい!」となる。

 

②喫煙して肺ガンにならない人(A)と、喫煙して肺ガンになる人(B)を見るが、Aを重視してしまい、「喫煙して肺ガンにならない人もたくさんいるぞ!やっぱり自分は正しい!」となる。

 

③AとBを同じ重要度で判断し、「Bもそこそこ多いということは、自分は間違っているかもしれない」となる。

 

④AとB、そして喫煙していないで肺ガンにならない人(C)、なる人(D)たちを全て熟慮し、「喫煙して肺ガンになる確率{B÷(A+B)}より、喫煙せずに肺ガンになる確率{D÷(C+D)}の方がずっと少ない、ということは自分は誤っている」となる。

 

いかがでしょうか。

ちょっと油断すれば、というかこの事実を知らなければ、①や②のように考えてしまうのが普通です。

そうならないためには、上記のような心理に陥りやすいということを知るのが第一なのだそうです。

 

施術の理論でも、トレーニングの理論を考えるにも、④のように考えたいものです。

 

さて次回は、「自分が正しいと思いやすい」という心理を、また違った角度から見ていきます。
大数の法則を少数にあてはめてしまう心理についてです。

 

 

 

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