前回『先延ばし症候群を改善する方法』の続き。先延ばし症候群を改善するアシスト要因について説明します。
まず、この研究を見て下さい。
被験者に握力計を渡し、モニターに「握って下さい」と表示されたら握ってもらう実験を行った。しかし実は、モニターに表示されるのは「握って下さい」という指示だけでなく、”サブリミナル”も含まれていた。
サブリミナルというのは、被験者が気が付かないくらい、ほんの一瞬だけ画像を表示させるものです。これは、「何か見えたようだが、何が表示されたか理解できない」というものではなく、本人は全く気が付かないものです。
サブリミナルを用いてモニターに「がんばれ!」と表示すると、通常の場合より握力が2倍に伸びた。さらに反射スピードも上がり、持続力も上がることが分かった。
被験者は全く気が付いていないにも関わらず、無意識に「がんばれ!」という単語に反応しているのです(実験後、被験者に質問しても、「がんばれ」と表示したことに気づいている人はいない)。
ちなみに、何でもない単語、例えば「グレープフルーツ」と表示しても、少し反応は速くなりますが、「がんばれ」と出したときのような効果はないのだそうです。
そしてこの効果の面白いところが、意識に上らなくとも”情動に直接訴えかける”というところです。
前回、意識的な思考により情動を変化させることは難しいと説明しましたが、「がんばれ!」という文字を見るだけで情動が変化しうるのです。
受験生が部屋の壁に「必勝!」とか「踏ん張れ!あと三か月!」とか貼っておくのも、あながち無意味ではないのです。
それを目にするだけで、無意識に頑張ることができるようになるのですから。
ではこの知識を基に、先延ばし症候群を改善する方法(一例)をご紹介します。
まず、始める”きっかけ”としてタイマーを使います。
そしてそのタイマーに、「がんばれ!」なり「気合だー!」なり「おんどりゃー!」なり、自分の気合が入りそうな言葉を書いて貼っておくのです。(ちなみに、尊敬している人や、好きな人の直筆だとさらに効果があがります)
すると、鳴ったタイマーを消す時に必然的に目に入るため、無意識に情動が奮起することになるのです。
そして、やり始めてしまえば、意識は身体活動の後からついてきますので、きっとやり遂げることができるでしょう。
これのすごいところは「そんなので効果あるの?」と疑問を抱いている人でも、効果が見られることです。
(※ただし、疑問を抱くのではなく、頭ごなしに否定するタイプの人には、かえって負の効果が増幅されてしまいますのでご注意ください)
半信半疑だとしても、試してみる価値はあると思います。
さて次回は、サブリミナル効果繋がりで、とても興味深い研究「笑顔の伝染」を紹介します。
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