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特性5因子 『調和性』~共感する人~(1/2)

photo by Garry Knight

今回は、性格診断【特性5因子】の調和性についてまとめました。

※特性5因子診断をされていない方は、先に→コチラ←で診断をしてから読むことをおすすめします。ちなみに僕の調和性のスコアは12、「中間〜やや高い」でした。

 

 

調和性の話をするためにはまず、心の理論について理解する必要があります。

心の理論によると、他人と協調するためには、【メンタライジング】【共感】という2つの能力が必要だとされます。

簡単に説明しますと、
メンタライジングとは、他人の心の状態を類推、推測する能力であり、
共感とは、他人の情動に自身を重ね、他人と同じ感情を抱く能力です。

 

メンタライジング能力を測る課題も面白いです。

二つの指人形を使って短いストーリーを見せる実験が有名です。

小さいお子さんがいるなら、やってみると面白いです。僕もうちの子にやりました。

舞台にはサリーとアンの二人がいる。舞台にはカゴと箱が置かれている。

サリーはおはじきで遊んだ後、おはじきをカゴに入れ、それから舞台を去る。

サリーがいない間に、アンがおはじきをカゴから箱に移し替える。その後サリーが戻ってくる。

ここで被験者(子ども)に質問する。
「サリーはまたおはじきで遊びたいようです。さて、サリーはどこを探すでしょう?」

 3歳までの子供たちはすぐさま質問に答えます。

「箱の中を見るよ!」「どうして?」「だってアンがおはじきを箱に入れたんだもの!」

ですが、4歳を超えると、子供たちはサリーがカゴの中を見るだろうと分かってくるのです。
これは、自分たちの知識(おはじきが実際には箱にある)と、サリーの心の状態(おはじきがカゴの中にあるという信念)とを区別することができるからです。
(ちなみにうちの子は、5歳になっても「箱!」と答えてました。笑)

 

これこそがメンタライジング能力であり、その能力には、個人差があります。

 

メンタライジングは入れ子状になっているので、その能力を測るには、入れ子が何層まで理解できるかを調べるのです。

例えば…

ケイジは、カズヒサとタケユキが旅行に行きたがっていると、ミチヨが考えていることを、タツヤが信じるように望んだ。

これくらいなら、まだ理解できる人が多いです。

しかし、このレベルより上になると、極端に難しくなります。

例えば次の例を考えてみてください。

ミチヨが何をしたいのか、タツヤが知っていると、ケイジが考えているかどうか、カズヒサに見破らせたいと、タケユキが望んでいると、カズヒサが思っていると、リョウは思った。

もう僕にはさっぱりです。

ですが、人によってはこの課題をうまくやりこなす人たちがいます。そして、そういう人は、友だちが多いようなのです。

実際、学齢期の子どもで行った実験でも、このメンタライジングの能力と、友だちとうまく付き合えるかどうか評価した査定とが、強く相関していました。

 

そして心の理論のもうひとつの側面は、共感です。

さきに、共感とは他人の情動に自身を重ね、他人と同じ感情を抱く能力だと説明しました。

この共感が強いと、自身の情動も動かされることにより、行動の選択にまで影響を及ぼすのです。

下の例を見てください。

例えば、道ばたで重たい荷物を大変そうに(辛そうに顔をしかめながら)運んでいる老人を見かけたとする。

メンタライジング能力に欠ける人は、辛そうな表情を見たとしても、老人が「辛そうだ」ということが分からない。

メンタライジング能力があり、共感能力に欠ける人は、老人が「辛そうだ」ということが分かるが、自身の情動が動かされることはない。

そして、メンタライジング能力も共感能力も高い人は、老人が「辛そうだ」ということが分かった瞬間、自身にも「辛い」という情動が生じる。そして、自身の「辛い」という情動を緩和させたいがために、老人に手を差し伸べる。

相手の情動を読み取り、自身にも「辛い」という情動が生じるのが“共感する”ということです。
そして、共感によって生じた「辛い」という情動を解消するために、「助ける」という行動の選択が行われるのです。

 

では調和性について簡単にまとめてみます。

【調和性スコアの高い人】

カウンセラーだったり、ソーシャルワーカーだったり、他人のために尽くすボランティア活動に関わります。

他者を助け、協力的で信頼でき、共感性があるとされ、人と争ったり、侮辱することもめったにありません。

何かあってもすぐに許し、実際に相手が悪くてもあまり怒ることはありません。

 

【調和性スコアが低い人】

あまり他人を信頼したり助けたりせず、冷淡だったり敵対的になる傾向が強いです。また、人間関係は調和を欠きます。

あえて他者に敵対する行動をとるつもりがなくとも、相手の心の状態を正確に思い描くことができなければ、それによる行動は「敵対的」と映ることでしょう。そのため、しばしば相手からの敵対的な反発を誘うこともあり、協調的な相互交流に欠けます。

そしてそれが引き金となって、さらに他者への不信、敵対行動に拍車がかかることも…

 

ここまでの説明を見ると、人間関係と良好な社会的サポートを持てるのだとしたら、調和性は高い方がよいように思われます。

 しかし、進化論の“適応”という観点からすると、「よい」とは言えない側面もあるのです。

これは、調和性の低い人は他者の利益を低く評価し、調和性の高い人は他者の利益をかなり高く評価するという特徴にあります。

例えば、食糧難の時代に、自分の分を全て他者に分け与えるような調和性のきわめて高い人は、子孫を残すことはなかったでしょう(現に動物の行動は、みな自分勝手で、他者へ譲ろうという意志は全く見えないように思える)。

調和性の高さは、良き社会関係 という点では利益をもたらしますが、個人的成功という観点からすると、マイナスの側面もありそうだということです。

そしてこれが事実だという根拠もあります。

おおむね40代の企業管理職約4000人を対象とした研究によれば、収入、昇進度、社長になる可能性のそれぞれで、調和性のスコアはネガティブな予測要素であった。

これは、調和性が高くなるほど、収入、昇進度、社長になる可能性が低くなることを示しています(こういった研究は多々あります。他にも→『お人好しほど収入は少なくなる(WIRED NEWS)』など)。

言い換えれば、管理職としては、調和性が低いほど成功するのです。

さらにまた、クリエイティブ(創造的、独創的)な素質は開放性というパーソナリティー次元と最も厳密に結びついているのですが、現実にクリエイティブな仕事で成功するかどうかを予測するのは「調和性の低さ」だということが明らかとなっています。

成功したいならば、冷酷でなくてはならず、自分自身と仕事を第一に考えなくてはならない。

人の上に立つような人物は、確かに調和性が低い傾向にあるようです(あくまで“傾向”ですが)。

経営者が部下の気持ちを理解していないと感じるのも、政治家には一般市民の気持ちが分からないと感じるのも、こういった側面があるのかもしれません。

このように、他人と友人関係を築き、協調的な行動をとらせることに関わるのが調和性です。

 

 

そしてもう一つ、調和性において特筆すべき点があります。

それは、女性は男性よりも調和性が高いという事実があることです。

調和性においては、平均的な男性が取るスコアは女性全体の七割よりも低いのだ。

実験的に女性にテストステロン(男性ホルモン)を与えると、共感的行動が少なくなることも示されている。

この違いは、人類の進化の歴史によってもたらされたのでしょう。

女性は、男性のように個人のステータスを獲得することよりも、
集団における調和的なメンバーであることによって、より多くの利益を手に入れてきたのであろう。

まず、きわめて高いステータスの男性は、多くの子どもの父親になることができるという事実があります。

一方、女性は出産能力には限界があり、子育てをする上での他者からの手助けも必要とされるのです。
そしてそういった手助けを受けるためには、高い調和性による社会的能力が役立ったのでしょう。

社会的能力のある女性は、自分と子どもたちを守るための優れた人間関係のネットワークを維持することができた。

繁殖を成功させる上では、調和性の低い男性、調和性の高い女性が優位に立ったことにより、この男女差が生じているようです。

メディアでたまに耳にすることに、「トップに立つのは男性ばかりだ。これは男女差別だ。」というものがあります。差別によって、女性の出世を押さえつけているのだと。

しかし実際には、社会的連携や良好な人間関係を犠牲にしてまでステータスを重要視する女性が、それほど多くはないことも考えられるのではないでしょうか。

男性も女性も、平均して同じモチベーションをもっているとは限りません。

社会のあらゆる分野で男女が等しく活躍するというのは、必ずしも期待すべきではない。

男女の違い、個々の違い、それはまさに千差万別です。

全く同じ状況になっても、その感じ方や対処法、個人的な選択肢には大きな違いがあるということは、理解すべきことでしょう。

 

調和性は他の特性とは違い、メンタライジングと共感の2つの要素が絡んでいるため、少しややこしいです。

メンタライジング能力が高く、共感能力が低ければ、
他人の心情を読み、空気を読むのが得意なので、一見すると調和性が高いように思えます。しかし一方で、他人をばっさり切るような言動もできるでしょう。

そして、メンタライジング能力が低く、共感能力が高ければ、
全く空気が読めずに、他人を傷つけるような行動を平気でしてしまうこともあり、一見すると調和性が低いように思えます。しかし一方で、友だちが悲しんでいるとはっきり分かる時は、共に悲しんで共に泣くこともあるのです。

次回はそういった、(調和性の説明の一環として)メンタライジングと共感の能力差による、サイコパスや自閉症、そしてテレパシーなどについて説明していきます。

 

→次の記事『調和性(2/2)』

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