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特性5因子〜自分らしく生きるということ(2/2)

photo by Dasha

※この記事は、性格診断の関連記事↓です。

 

前回記事、『自分らしく生きるということ(1/2)』の続きです。

読者の中で、自分のパーソナリティーの働きに不満を感じている人がいるならば、その理由の多くは神経質傾向が高いことにあるのではないでしょうか。

高い神経質傾向は、あらゆることに苦しみを吹き込むのですから。
他の極端なパーソナリティー特性(例えば低い誠実性など)も、人生にきわめて強い影響をもたらします。しかしそうであっても、彼らの神経質傾向が低ければ、ただ肩をすくめてやりすごすだけで、神経質傾向の高い人のように、気にかけたり悩んだりしないでしょう。

だからこそ、神経質傾向が高い人もネガティブな情動に屈するだけでなく、「特徴・特性に逆らった」表出戦略を心がけることが必要なのです。

 幸いにもそのような戦略は存在しており、しかも実際にかなり効果的である。

エクササイズ、ヨガ、瞑想から、認知行動セラピー、さらには抗鬱薬や抗不安性薬剤に至るまでさまざまな戦略があり、それぞれに働き方に違いがある。

エクササイズは気晴らしになり、身体を緊張から解きほぐす。瞑想は本人の意識を高め、ネガティブな情動を受け入れるように導く。逆に認知行動セラピーは、理性を使うように仕向ける。また薬物療法は、セロトニンシステムに生化学的サポートを与える。

これらの戦略は神経質傾向を減らすのではなく、神経質傾向が作り出す問題のいくつかと、もっと効果的に取り組めるようにするものだ。

人によって効果のある戦略は違うが、いま挙げたものだけでなく、あらゆる選択肢を真剣に試してみるのは、けっして恥ずかしいことでも不名誉なことでもない。

それは自分自身に対する義務である。

前回、「人としての成長を目指して努力するのは、無意味だというのか?」という問題提起をしましたが、上記がその答えとなります。

人の成長に関わるもの、これまでとは違った自分になりたいと思うなら、やり方はたくさんあります。(前回記事の第二、第三のレベルへのアプローチ)

そこに自由があると同時に、表出行動の選択にあたって少なからぬ責任をもちます。

自分が選択したものではない、パーソナリティー特性(第一のレベル)については、もちろん誰からも責任を問われることはないものです。

しかし、それらの特性の表出として自分が発達させてきた行動パターンについては、道徳的にも法的にも責任があります。

すべての特性の表出行動には、道徳的に良いもの、中立のもの、悪いものがある。

そして私たちには少なくとも、道徳的に中立である行動を発達させる責任があるのだ。

 

 

ここまで一貫して伝えてきたメッセージは、自分の基本的なパーソナリティーの傾向が今と違っていてほしいと願う理由など、まったくないということです。

すべてのビッグファイブ次元において、どのレベルにも利益不利益がある。

こちらのほうが本来的に良いとか悪いとかいったパーソナリティー・プロフィールなどというものはないのである。

(中略)

大切なのはむしろ、自分がたまたま受け継いできたパーソナリティー・プロフィールの強みを利用し、弱点からくる影響をできるだけ小さくすることによって、実り豊かな表出を見つけ出すことなのだ。

このように見るならば、個人のもつ性格とは利用されるべき資源であって、なくなってほしい災いではない。

 

 

 では最後に、本(パーソナリティを科学する―特性5因子であなたがわかる)で紹介されているいくつかの例を挙げて、特性5因子(ビッグファイブ理論)の一連記事を終わりにしたいと思います。

たとえばあなたが、自分の時間を捧げる対象として、地球温暖化の意識を高めることが最も大切だという結論に達したとしよう。

問題は、あなたの外向性が低く、神経質傾向が高いことである。つまりあなたは、とうてい演壇の上で聴衆に向かって呼びかけたり、あるいはメディアを通じて人々を説得する仕事に向いていないのである。

その種のキャンペーンには、大衆の想像力を捉えるカリスマ的指導者や話し手が必要なのだ。

なんとか頑張ってやろうとしてもうまくいかず、あなたは挫折した気分に襲われる。

では、どうするか。あきらめて他のことをするべきだろうか。どうやったら、自分の価値観が命ずることと、自分がもつパーソナリティーとを一致させることができるだろうか。

 現代のすべての複合的な活動と同じく、地球温暖化キャンペーンもまた、多くの面をもっている。必要とされるのは、表に向けるカリスマの顔だけではない。舞台裏で、気候の変動に関する最新の科学的研究を集め、批判の目で査定するためのリサーチワークもまた必要なのだ。

ここにあなたの出番がある。

自分では気に入らないその内向的性格ゆえに、図書館で静かに資料に向かい、科学的裏付けをとる作業に一日を過ごすのを心から楽しめるのだ。

大勢の人の前であなたをナーバスにするその神経質傾向こそが、研究のこまごました統計データや方法論を相手に粘り強く取り組むためには理想的なのである。

この種の不可欠な仕事は、キャンペーンのスターには絶対に無理だろう。あなたが羨む彼らの高い外向性と低い神経質傾向がそれを阻むからだ。

ここにあなたが赴くべきニッチ(適所、隙間)がある。要するに、自分に向いていない事に、時間とエネルギーを浪費しないことである。

正しいニッチにいさえすれば、キャンペーンで働く他の人々はあなたを必要とするだろう。そしてあなたが彼らを高く評価するように、彼らもまたあなたを高く評価するだろう。

 

もう一つ。

 

個人的な経験から、うつや自傷の衝動に苦しんでいる多くの若者たちを助ける何かをやりたいと思うようになったとする。

しかし問題はあなたの調和性が低いことだ。これではボランティアやプロのカウンセラーの仕事は向いていない。理性ではそれが重要だとわかっていても、あなたにはどれも単調で退屈で面倒くさいと映るだろう。

たとえそうであっても、あなたの低い調和性は、若者を助けるために役立てることができる。

あなたはタフな決定をする実際的なまとめ役が向いているのだ。

さまざまなボランティア・プロジェクトや若者たちのチャリティー・プログラムは、善意はあっても非能率的な人々であふれている。そんな彼らには、組織を合理的に率いて行動に導く事は難しい。

組織のコストを下げ、収益を上げるために、あなたのような人の存在は大きな力となるだろう。

あまり有能でないカウンセラーとして働くよりも、組織の側で働く方が、長期的にははるかにあなたの目的に合うはずだ。

たくさんの友人は作れないかもしれない。だが、望んだことは叶えられるだろう。

 

ここに挙げた例はほんの一部ですが、自分のパーソナリティー傾向と調和しながら生きるための大きなヒントがあると思います。

これまで何かに取り組んできて、一度として心が落ち着くことがなかったのであれば、ひょっとして自分にあったニッチ(社会的な役割、居場所)を目指していなかったのかもしれません。

家族や文化、メディアなどの公に評価されるような輝かしいニッチは限られています。
そしてそれは大抵、外向性が高い人のニッチなのです。

なぜなら、外向性が高い人ほど演説が上手で、外向性が高い人ほど人目に付き、世の中に向けての情報発信力が強いのですから。
そのため、外向性が高い人の理想が「世の中の理想」として広まりやすいのです。結果、外向性が高い人向けの、華々しいニッチほど評価が高くなってしまうわけです。

しかし、そんなニッチに縛られる必要はありません。

現代の社会においては、提供される社会的役割やライフスタイルはきわめて多様です。

ワーカホリック、家事労働者、親、庭師、あるいは道化、さらには資金調達者、科学者、そして奉仕者…。

リストは際限なくつづく。かつての社会はこれほど多様な人々の枠を支えることができなかった。今では、あなたのもつ特性がそのまま有利になるような適所を見出すことは、これまでにないほど可能なはずである。

ですがその一方で、落とし穴にはまる危険もあると著者はいいます。

薬物依存症や犯罪者のためのニッチ、世界が自分なしで動いていくのを横目で見ながら一人孤立して苦しむ人々のニッチ、そしてなかでも、自分が何のために生きているのかを見出せないまま、形だけの人生を生きる人々のためのニッチ…。

自分にふさわしい良いニッチを探し出すとともに、間違ったニッチ を避けるために、人は成長していかなければなりません。

あなたが外向性と開放性において高いスコアをもつのであれば、自己を押し出し自己の利益を追求する主体性の能力には問題がないだろう。だが、コミュニオン、つまり他の人々との交流については、おろそかになるかもしれない。

あなたが高い調和性を持っているならば、無意識にコミュニオンタイプの行動をするだろう。だが、果たして個人としての自分を十分に出しているだろうか。

人生においてしばしば、「特性・特徴に逆らった」適応を必要とするかもしれない。

自分のパーソナリティーが不得意な事柄に意識的に気を配るために。

 

この記事で説明してきたことはいずれも、「あなたのパーソナリティーを変えろ」と言っているのではありません。

 この一連記事に含ませたメッセージは、「パーソナリティーが結果的に何を引き起こすかを理解し、その情報を使って賢い選択をする」ということです。

そのための手段の一部は、これ以後の記事で紹介していきますが、まず初めに必要とされるものが、自己を知るということです。

 

最後に、この本の最後の一文を拝借します。

自己認識というこの貴重な財産を自分のものにするうえで、本書が少しでも役に立ったとすれば、私がこれを書いた目的は達せられたことになる。

 

特性5因子に関するこの本は、本当におすすめです↓

パーソナリティーを科学する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※特性5因子関連記事の引用は、ほとんどがこの本からです。
(それ以外の本から引用したものは、引用文の最後に書籍のリンクが貼ってあります。)

 

 

 次回からは、いったん心理学ネタからスポーツネタへ移ります。(年明けに心理ネタに戻る予定です。)

→次の記事『全身を使うということ』へ(作成中。毎週土曜日更新です。)

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