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寝たきりにならないために

先週、地元の高齢者学級にて「寝たきりにならないために」と題して講演した内容を、せっかくなのでブログ用にまとめてみました。

◆概要◆

大まかな流れは、下記のようになります。

ストレスがすべての疾患の元凶となる

ストレスに対処する能力を鍛えることが重要

もっとも効果的にストレス抵抗力を鍛えられるのが「運動」である

 運動が身体によいことは、誰でも知っていると思います。しかし、運動をしていない人が多いのも事実。
その理由の一つに、「運動の本当の効果を理解していない」ということがあるのではないか?と僕は考えています。

そこで、運動がどのようにして老化を防ぎ、心と体を健康にしていくのかを説明していきたいと思います。

これを読み、「わたしも運動してみようかな」と感じて頂けると幸いです。そして、実際に運動をしている方も、知識を得て、さらに健康になって頂ければと思います。(知識を持って運動を行った方が、効果が高まることが研究によって示されています)

 

◆密接に関わるさまざまな疾患◆

ではまず、この町の要介護の原因となる疾患について見ていきましょう。

一位 認知症
二位 脳血管疾患
三位 骨折関節疾患等
そして、高血圧症、ガン、糖尿病、心臓病と続きます。(資料 十日町市役所より)

これらは別々の疾患ではありますが、どれも高齢期に直面する疾患であり、さまざまな要因を通じて結びついています。
下記を見て下さい。

  • 肥満の人は、普通の人の二倍も認知症になりやすい
  • 糖尿病の人は65%も高い割合で認知症になってしまう
  • 高血圧症の人は脳血管疾患になりやすい
  • 骨折関節疾患を患うと、認知症になる確率を高める

このように、要因や原因は密接に関わっているのですが、これら全ての疾患には、共通する重大な要因があるのです。

それが、ストレス

つまり、精神的ストレスや肉体的ストレスが多ければ多いほど、これら全ての疾患にかかる確率が高くなるのです!

 

◆ストレスとは何か?◆

一般的に言う、いわゆるストレスというのは、精神的ストレスのことを指しているように思われます。 
しかしそれ以外にもさまざまなストレスがあり、その分類法も様々です。

ここでは代表的な例として、精神的ストレス、肉体的ストレス、免疫系のストレスを挙げていきます。

精神的ストレス

肉体的ストレス

免疫系ストレス

重度の
ストレス

親族の死

離婚

全力疾走

強度のスポーツ競技

インフルエンザや、

ノロウィルスへの感染

中度の
ストレス

友人とのケンカ

失敗体験

ジョギング

階段の昇降

いわゆる風邪

軽度の
ストレス

悪いニュースを
見聞きする

天気が悪い

立ち座り動作

歩行

身の回りの
バイ菌などに晒される

これらは、程度の差、種類の差こそあれ、どれもストレスです。

どんな種類のストレスに晒されたとしても、身体で起こる反応は基本的には同じです。交感神経系が優位に立ち、心拍数が上がり、血圧が上がり、瞳孔が開き、骨格筋は緊張し、消化器など内臓の機能は抑えられます…

ストレスに対する反応が同じということは、精神的ストレスが肉体や免疫系に影響を及ぼしたり、肉体的ストレスが精神や免疫系に影響を及ぼすことは十分に考えられるでしょう。

そしてストレスに対してよく見聞きするのが、「ストレスを減らそう!無くそう!」といったもの。
世間一般には、「できるだけストレスの基になるようなものは避けたほうがよい」という風潮があるように思います。

しかし僕は、その考え方は根本が間違っていると考えています。

 

◆ストレスは必要不可欠なもの!◆

例えば、「ストレスをできるだけ減らそう!」と言って、肉体的ストレスを避けたらどうなるでしょう?
階段の昇り降りも、立ち座りも肉体的ストレスにあたりますから、それらを避けるには寝たきりでいればよいことになってしまいます。

しかしそれが、どんなに身体に悪いことかは、お分かりだと思います。

体力や筋力は、25歳くらいで落ち始めて、50歳を過ぎるとその低下率は一年で約1%にも及ぶと言われています。
そして、寝たきりの初期では、一日で約1%も筋力が弱くなってしまうのです。ということは、

「寝たきり一日は、一つ年をとることと同じ」

ということになります。つまり、肉体的ストレスをさけることは、身体を弱体化させ、老化を早めてしまうと言っても過言ではないでしょう。

やはり体力を維持するには、多少は歩いたり、階段を上り下りするなどの肉体的ストレスを与える必要があるのです。

それが体力を維持するための訓練やトレーニングになるのですから。

 

上記の例は、肉体的ストレスの話ですが、これはその他のストレスにおいても同様です。次の研究を見て下さい。

『多少の不衛生は、健康に良い』

ある一定ラインを超えると、衛生面に気を使い過ぎることは、身体に悪影響を及ぼしているようだ。

滅菌し、消毒しすぎることで、免疫系のストレスが大幅に減り、免疫系の機能が衰えてしまい、正常に作用しなくなってしまう。それによって腸内細菌のバランスが崩れ、アレルギーや胃腸炎の原因になるなど、さまざまな問題が生じる。

多少の不衛生は、害にならないだけでなく、免疫系の訓練のために必要な要素でもある。(アメリカ疾病予防センター、2011)

※ノロウィルスの流行時など、食中毒の危険性があるケースを除く

この研究を行ったRook氏は「少々の汚れが害になることはなく、子どもが手に泥をつけて戻ってきても悪いことではなく、食べ物をつまむ前に手を洗わせる必要はない」と述べています。

下水処理が行われていない発展途上国(赤痢やコレラが蔓延する危険性がある地域)などでは、衛生的な生活を送ることは疾患を防ぐ上で重要ですが、日本などの先進国においては、今以上に潔癖になればなるほど、免疫力が正常に作用しなくなってしまうようなのです。

 

つまり、ストレスは、身体に悪いものでありながら、健康を保つ上で必要な要素でもあります。  
ある程度のストレスはどんどん受け入れ、大きなストレスに対抗する力を身に着けることが大切なのです。

 

◆ストレス回復(超回復)とは?◆

では次に、なぜストレスが身体によいのか?について、 ストレスによって心身がどのように強化されるのかを説明していきます。

分かり易い例として、筋力増強トレーニングについて図にしてみました。

下図は、縦軸が体力・筋力。横軸が時間の流れになります。

運動をすると、一時的に疲労して弱体化するのですが、自然治癒力によって回復していきます。
そこで起こるのがストレス回復(超回復)です。上図を見ると、運動を行う前の基準値よりも、少し強くなって回復しているのが分かるかと思います。

この、『運動→疲労→休息→ストレス回復』の流れをうまく利用すれば、心身は強くなっていくのです!

 

これは精神的ストレスにおいても同様で(強化されていく際の細かい機序は違いますが)、小さな挫折を繰り返した人の方が、うつ病になりにくいということも調査によって分かっています。

また、予防接種も同じような考え方であり、免疫系も、ストレスがかかった後に強化されていくわけです。

 

◆ストレス回復がうまく作用しないケース◆

そして逆に、 このストレス回復がうまく作用しないケースも図にしてみました。

上図は、精神的ストレスにおいてよく生じるものです。

例えば、愛のない結婚生活、家族関係の問題、仕事の行き詰まり、トラウマなどの長期的なストレスによって心身を蝕まれていくことは、よく見られることです。

それによって、脳が萎縮して認知症の発症率が高まってしまう可能性も示されています。(Prolonged stress ‘can shrink the brain’ and even lead to dementia

また、精神的ストレスによって細胞内の酸化がひどくなり、細胞の加齢(寿命に大きく関係があるとされる“テロメア”の短縮)が進むことも研究によって示されています。(Underpaid, overworked and ageing faster

 

ストレスがかかると、 血管は収縮して血圧は上昇し、脳血管疾患のリスクも高まります。筋肉は緊張してこわばり、腰痛や肩こり、関節炎などを悪化させます。そして免疫系も弱体化し、ガンの発症率も高まってしまうのです。

 

そして先に説明した通り、ストレスを避けすぎても、心身は弱体化していきます。

寝たきりも、潔癖もそう。

そして、「人間関係がめんどくさいから、できるだけ他人と関わらないようにする」というのも、これにあたります。
そうやって、ストレスを避けることで、さらに精神力は弱体化し、余計に人付き合いがおっくうになるでしょう。そして他人との関わりを減らすと、さらに精神力は弱体化していき、一段と人間関係がめんどくさくなり、…と悪循環に陥ってしまうのです。

こういった「ストレスを避けること」においても、心肺機能の低下、筋力の低下、免疫力、思考力の低下、脳の萎縮などさまざまな悪影響が生じます。

 

では、心身によいストレスとは、どういったものなのでしょうか?

 

◆心身に良い影響を与えるストレス◆

ストレスは多過ぎても少なすぎてもダメ。例え些細なストレスでも長期的・持続的なストレスはよくありません。
ストレス回復(超回復)を促す、心身に良いストレスとは『適度な一時的ストレス』です。

そして、その適度な一時的ストレスを与えるのに最適なのが『運動』なのです!

 

定期的な運動は、

脳や体に適度なストレスを与えることで、脳細胞を活性化して頭脳を明晰に保ちます。

精神力を強くしてうつ病を防ぎ、免疫系を活性化させて感染症や癌を予防し、筋力や骨を強くすることで骨折などの怪我も予防してくれます。

 

運動によるこれらの効果は、「老化を防ぐ」と言っても過言ではありません。

実際、運動をすると、脳自体の容積が増え、脳が若返ることも研究で示されています。

矛盾するようですが、定期的に適度なストレスに晒されることは細胞にとってプラスになります。抵抗力がつき、より強いストレスに対処できるようになるのです。

 

◆運動の効果◆

では、具体的な運動の効果を見てみましょう。

  • 運動を一日15分すると、死亡リスクが14%減る
    これは、41万人を対象に平8年間追跡調査して分かったことです。この研究により、身体を壊さない程度であれば、運動はやればやるほど死亡率が低下することが判明しました。
  • 運動を週に2回以上すると、認知症になる確率が半分になる
  • 運動をする人はガンにかかりにくい
    集団研究によって分かった、ガンの最も明らかな危険因子は、『運動不足』です。
  • 運動をするとストレスやうつ病を抑えられる
  • 運動をすると脳と体が若返る(脳の成長物質が35%も増える)
    60代~70代の被験者に、運動を週に三回、六ヶ月行なってもらい、MRI画像検査にて運動前と運動後の脳を比較したところ、前頭葉と側頭葉の容積が増えていたことが研究により示されています。

「もう歳だから、いまさら運動したって意味がない…」というのは大きな間違いです。(→93歳の若返り実例
例え高齢であっても、例え入院して寝たきりになったとしても、動かせるところは動かして、たくさんしゃべって、身体に口に、大いに動かしましょう。

それが脳と身体を活性化させ、回復を早め、二次的な疾患(認知症など)を防ぐことにも繋がるのです。

 

◆運動を行う上で◆

最後に、運動を行う上で知っておいて欲しいことをいくつか挙げていきます。

◎体重は気にしなくてよい
昨年末、「 運動で体力を維持することが長寿の秘訣だ」という研究が発表されました。
この研究によって明らかになったのは、「体力の増減は死亡リスクに影響している」「運動不足が死亡リスクの要因となる」「体重の増減は死亡リスクとの関連が見られなかった」ということです。
この研究を行った博士は言います「大切なのは体力の維持・向上を続けることで、体重の変化については、それほど心配する必要はなさそうだ。活発に体を動かしているが体重はなかなか減らないという人にとっては、良いニュースだ」。

気を使うべきところは、体重ではなく、体力のようです。

 

◎痛みがあっても運動をした方がよいこともある!?
ぎっくり腰などの急性腰痛患者を対象とした研究によると、動かさずに安静にしているより、痛くても多少は我慢して日常生活を送っている方が、腰痛の回復がかったことが分かっています。
また、慢性的な痛みに対しても、ウォーキングやジョギングなどにより身体を動かしている方が改善率が高いことも示されています。

一般的な、腰、膝、肩の痛みは、筋肉や腱の過度の緊張や弱体化によって起こることが多いです。

痛いからと言って体を動かさないでいると、筋肉組織や血管組織などが弱体化し、固くこわばって縮んでいきます。すると、血液の循環が悪くなり、血液の循環が悪くなると、筋肉組織はさらに弱体化し、痛みも改善されない…

この悪循環を断ち切るのが「運動」です。

動かし始める時は若干痛みを感じることもありますが、運動をすると筋肉はほぐれ、血液の循環がよくなるため痛みも改善されるのです。
また、ストレスが原因となって痛みが出ることも多々あり、そういったケースにおいても、運動がよいのは明らかです。
※運動をしてはいけない傷病もあります。痛みや不調がある場合は、きちんと診察を受けてから運動を行いましょう。

 

◎運動は一人より二人、二人より大勢で行う方がよい
複数人で運動をすることにより、より大きな効果があることが知られています。他人との繋がりは、より長く、より良く生きる助けとなります。
統計は、人の社交性と死亡率には明白な反比例の関係が見られることを示しているのです。(社交性が高いほど、死亡率が低い)

ここまで、「運動がいかに心と身体によいか」という話をしてきたわけですが、良好な人間関係を持ち、他者と接することは、運動と同等か、それ以上の効果があることが分かっています。

ということは、

人と触れ合い、おしゃべりをし、笑いながら運動をすることが、どんなに身体によいかおわかり頂けると思います。

この町には、ひだまりプール、ケンコツ体操、卓球など、さまざまな活動の場がありますので、是非そういった場を活用して頂き、健康に長生きして頂きたいと思います。

 

運動教室

 

 

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