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今回は、強いマッサージによる悪影響、
【強い刺激によって筋肉が緊張してしまう】ということについて説明します。
過去記事
『セルフマッサージやストレッチをするにあたって、知っておいた方がよいこと』
『痛みの強さを基準にマッサージしない方がいい理由』
『マッサージしたのに、悪化しちゃう!?』の続きです。
マッサージの話をする前に、自律神経について説明します。
〜自律神経〜
・意思とは関係なく働き、生命活動をコントロールしている。
・交感神経と副交感神経に分かれている。
主に、交感神経は活動時に働き、副交感神経は休息時に働いています。
これはシーソーのような関係で、一方が優位にある時は、もう一方が休んでいるような感じです。
交感神経について説明するのに一番分かりやすいのは、
『強敵と戦う時』の反応でしょう。
戦う時は、交感神経が優位となりますが、戦うためには(全力疾走で逃げるにしても)、大きな筋力が必要です。
そのために、心拍数や血圧が上がり、大きい筋肉へ血液を送り、筋肉は緊張します。
そして、出血を防ぐために皮膚の血管は収縮します(緊張すると手が冷たくなるのはこのため)。
一方で、消化器系や免疫系などは抑制されます。
とりあえず、消化したり、免疫でウイルスをやっつけたり、ケガを治したり、といった機能は休ませて、“今”の戦いに集中するのです。
そんな感じで、
交感神経が優位になるのは、「ケンカする時」や「怒る時」、「熊から逃げる時」などです。
一方、副交感神経が優位になるのは、「食後にゆったりしている時」や「寝る時」などになります。
身体を休めるために、筋肉はゆるみ、
消化器系などの内臓機能が活発化し、
栄養を吸収したり、疲労物質を代謝して排せつする機能も促進します(つまり疲れをとる)。
それから、免疫系が活性化して、病気やケガを治すシステムも活発になります。
疲れた時や風邪をひいた時、アルコールを飲み過ぎた時などに、
「寝るのが一番!」と言われますが、
これは、寝ることによって副交感神経を優位にして、代謝機能などを促進させるからなのです。
どちらかが優位にある時の、主な身体の変化をまとめたのが以下です。
心拍数や血圧が上昇
骨格筋へ血液が集中して筋肉が緊張
(すばやく大きなパワーを発揮するため)
(出血を防ぐため)
消化吸収など内臓機能は抑制
心拍数や血圧は低下
(身体を休めるため)
消化吸収などの内臓機能が促進
このように、状況に合わせて、無意識に血圧が上がったり、血流が変化したりして、その状況下で最も効率的なシステムを作っているのです。
では、この自律神経(交感神経と副交感神経)の働きを踏まえた上で、マッサージの話に戻ります。
みなさんは、強いマッサージをすると、交感神経と副交感神経のどちらへ傾くと思いますか?
答えは、交感神経です。
強い刺激によって、筋肉は緊張して臨戦態勢となり、消化器系や疲労回復の機能などは抑制されてしまうのです。
マッサージは、筋肉をほぐし、疲労を回復させ、ケガを治すために行うのがほとんどだと思います。
しかし、やみくもに強いマッサージをしてしまうと、
(前回記事で説明したように)組織を壊してしまったり、
(今回説明したように)筋肉を緊張させてしまったりすることがあるのです。
(※試合前などに、筋肉の活動を促進させる目的で、交感神経を刺激するようなマッサージを行うこともあります)
強いマッサージよりも、優しく撫でるだけの方が、筋肉をほぐす効果があるという研究報告までありますので、
マッサージは強くし過ぎず、ちょっと物足りないくらいにするのがよいと思います。
さて次回は、自分で自分にこちょこちょしてもくすぐったくない理由について説明していきます。