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特性5因子〜パーソナリティーを変えることはできるのか?(1/2)

photo by NTNU, Faculty of Natural Sciences

※この記事は、性格診断の関連記事↓です。

 

前回の続き、パーソナリティーに影響を及ぼすとされる環境要因のひとつ、進化上の妥当性について少し詳しく説明していきます。

では、ミジンコの話から。

ある種のミジンコは、頭と背に突起があるものとないものとがある。突起の有無は遺伝ではなく、完全に環境要因によるものだ。

突起があれば、まわりに捕食者がいる場合には保護の役割を果たす。 ただし、突起を生やすにはコストがかさみ、成熟に時間がかかり、捕食者がいないところでは生き残りに不利である。

つまり、突起の有無の決定は、捕食者がいるのか、いないのかという環境によって変化させるのがベストなわけです。

そこでミジンコは、捕食者が放出するカイロモンと呼ばれる化学物質を検知して、自分の成長パターンを決めているのです。

それができるのは、ミジンコの遺伝子に、あるメカニズムが明記されているからなのだ。

「もし環境的キューX(カイロモン)が存在すれば、より多くのY(突起)をもった形態を発達させよ」

このようなメカニズムが進化しうるのは、Xが統計的にきわめて優れたキュー(Yが生存と繁殖に有利)であるときだけである。

言い換えれば、 Xとは、その個体が生きる上でYが役に立つことを確実に予測するものでなくてはならない。

環境的影響について考えるとき、このことを忘れてはなりません。

進化によって成体形が環境に影響されるのは、特定のキュー(手がかり、合図)を特定の結果へと導くメカニズムがあるときだけであり、そのメカニズムが存在するのは、その形態が有利であることがキューによって確実に予測される場合だけなのです。

つまりこれをヒトに当て嵌めるなら、 「おまえが生きる事になる環境がXのように見えたなら、Yというパーソナリティーを発達させよ」というメカニズムが必要なわけです。
そしてもし、そのようなメカニズムが存在するとしたら、 そのキューは、その人間が大人になったときに生活することになる環境状況を現実に予測するものでなくてはならないのです。

これを踏まえると、またいくつかの環境要因の候補が外されます。

たとえば「愛着理論」。
これは母・幼児の絆が一連の関係ひな形を形成し、子どもは成長したあともそれを重要な対人関係にあてはめるというものです。(もし子どもが、他人に対し薄情に育ったなら、「それは幼児期に母親の愛情が足りなかったからだ」という考え)

もちろん、母子の関係がきわめて重要であることは疑いようがありません。

ですが、「母と子」という一つの関係でもたらされた相互作用のタイプが、一生を通して今後出会うすべての相互作用を予測するようなことはありえません。

あなたの母親は病気かもれないし、ポジティブで活発かもしれない… そんな特異な事柄を基準にしてあなたの全パーソナリティーを調整するのは、進化の面からもほとんど意味がないのです。

そして、愛着についてのさまざまな研究が、これを裏付けています。

母親がうつの子供たちは、母親との関係では異常に沈んだ状態を見せる。だが幼稚園の先生と一緒にいるときには、その状態は消えて、普通に行動する。

当然のことだ。彼らが母親との相互作用から学習することは、「母親がどうであるか」であって、「世界がどうであるか」ではないのだから。

 

こういった進化の妥当性から評価すると、「兄弟の生まれ順によるパーソナリティーの違い」も信憑性が薄いように思われます。

生まれ順でよく言われるのが、「第一子は誠実性が高く、調和性が低いが、あとから生まれた子どもはとりわけ反抗的で、経験に対して開放的だ」というものです。

調査によっては、このような兄弟間の違いをいくらか裏付ける証拠が見出されましたが、これらの研究には、評価において「思い込み」が働いているようなのです。

大方、人が自分と兄弟のパーソナリティーを評価するとき、年上の兄弟は自分より少々まじめだと見なし、年下の兄弟は自分よりも反抗的で遊び好きだと見なすものです。

ですが、「まじめ」というのは「成熟した」という表現とやや似ており、「反抗的で遊び好き」というのはどちらかと言えば「子どもっぽい」と類似しています。

普通、年上の兄弟のパーソナリティーを想像する時は、いつも「自分より先に生まれた存在」として思い出します。
そして、年下の兄弟を思い出す時は、やはり、自分より若い相手なのです。(親が子どもを見る時も常に比較している。そして幼少期のイメージや偏見は、その子どもが大人になってからも続いていく)

したがって、評価者が年下の兄弟を反抗的だと見たり、年上の兄弟をまじめだと見なすのは、当たり前すぎる結果なのです。

こういった評価が意味をなすのは、家族とは無関係な人が評価したケースを考察する場合のみですが、そういった第三者を使って調査した場合、おおむね影響は見出されないのです。(つまり、生まれ順がパーソナリティー形成に影響を及ぼすことに関しては、説得力のある科学的裏付けはない)

たまたま母親から何番目に生まれたということが、人生のチャレンジに取り組むときの最善の方法を予測するなんてことは決して無い。

実際、その情報はまったく誤った予測を導きかねないのだ。

ひょっとしてあなたは、家族の中では身体的に一番劣った子供だったかもしれない。だが、あなたが大人になってから出会う人の90%については、あなたの方が身体的に勝っているかもしれないのだ。

つまり、「家族」という狭い社会の中で学習してきた家族状況への対処法を、たとえば大人の求愛とか、昇進を巡る同僚との競争にまで一般化するのは、大抵意味のないことなのだ。

 

このように、「生存と繁殖において優位に立つ」という進化上の妥当性から考えると、持って生まれたパーソナリティーを変化させるほどの環境要因はあまりないように感じます。

では、その「進化上の妥当性」を軸に、有力だと思われる環境要因とはどんなものなのでしょうか。

次回はその話をしていきます。

 

→次の記事『特性5因子 ~パーソナリティーを変えることはできるのか?(その2)』

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