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ヒトには三つの脳がある

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タイトルの通り、ヒトには三つの脳があり、それぞれが別々に機能しているのです。

ヒトの”脳”について、これを知らずには語れないと言ってもよいでしょう。そんな、ポール・マクリーンの『脳の三位一体説』についてご紹介します。

まず、ヒトと動物の脳を比較して、裸眼でもはっきり分かる違いがあります。それは、ヒトでは大脳皮質が大きいということ。大脳皮質は大脳の最上層にあり、高度な認識機能を持つ組織のすべてがここにあります。

豚の脳は私にとって大きな衝撃だった。「扁桃体」のような低いレベルの組織をヒトの脳と比べると、どこがちがうのか全然分からない。豚の脳とヒトの脳は、まったく同じだった。

ところが大脳皮質を見ると、違いは歴然としていた。 ヒトの大脳皮質は動物のものよりも見るからに大きく、しわがたくさん寄っている。顕微鏡など使わなくても分かる。[Temple Grandin]

 そしてさらに、動物の脳と、爬虫類の脳との間には、同じような共通点があります。爬虫類の生命維持機能を司る脳部位は、そっくりそのまま動物が持っている。動物の脳は、爬虫類の脳に、新たな脳を上乗せした形になっているのです。

これは、進化の歴史の中で、一つずつ積み重なっていったことを意味しています。

ヒトの進化の歴史は、まさに爬虫類から旧哺乳類へ、そして旧哺乳類からヒトへと進化してきました。そのため脳は、爬虫類脳旧哺乳類脳、そして、ヒトをヒトたらしめている新哺乳類脳の三つからできているのです。

 

では、一つずつ特徴を見ていきます。

 

最初の一番古い脳である爬虫類脳は、頭蓋骨の内側の一番下にあり、呼吸などの生命維持(無意識に行われる身体機能)に関する基本的な機能を持っています。ヒトの爬虫類脳は、実際の爬虫類の脳とそっくりです。

 

旧哺乳類脳は、脳の中央にあり、哺乳類の脳に相当し、情動(無意識に生じる感情)を司ります。ヒトの爬虫類脳と旧哺乳類脳を合わせた部分は、実際の動物の脳とそっくりです。

 

そして最も新しい新哺乳類脳は、脳の一番上にあり、理性や言語(意識的な思考)などを司る大脳皮質にあたります。これはどの動物もいくらかはもっていますが、霊長類でよく発達しおり、特にヒトにおいては桁違いに大きくて重要です。

 

面白いのが、これら三つの脳それぞれに、知能と時間と空間の独自の感覚、独自の記憶、独自のモノの見方があるということです。

三つの脳は、神経で繋がっていますが、それぞれの個性と制御システムを備えています。

 

ヒトの脳が、このように三つの脳からなっている理由は、進化は機能しているものを捨てないためです。組織であれ、タンパク質であれ、遺伝子であれ、じゅうぶんに機能しているときは、自然は新しく進化した植物や動物で何度も繰り返し使います。

これを「保存」と言います。

生物学者によると、「進化は、機能する組織を保存する」のだそうです。

つまり、進化は、古い脳を変えることなく、新しく進化した脳をそれぞれ古い脳の上にそのまま重ねたのです。

自然は、ちゃんと食べたり、眠ったり、起きたり、呼吸したりするトカゲを世界中にたくさん作ったなら、トカゲを犬に進化させる時には、犬用の呼吸器系をわざわざ作り変えたりしない。

その変わり、犬の新しい脳をトカゲの脳の上に重ねる。トカゲの脳が呼吸をしたり、食べたり、眠ったりすることを司り、犬の脳が支配階級を形成したり、子どもを育てたりすることを司る。

ヒトに進化させる時には、また同じことが繰り返される。ヒトの脳が犬の脳の上に加えられる。だから、ヒトはトカゲの脳で呼吸をしたり眠ったりして、犬の脳で徒党を組み、ヒトの脳でこの話を本に書くというわけだ。[Temple Grandin]

これは、古い家を壊して新しい家を土台から建てるのではなく、古い家を土台に建て増しするのに似ています。

そしてこれが、ヒトの特徴を探る上でとても重要となってくるのです。

次回は、「ドキドキする状況で愛の告白をすると成功する確率が上昇する」という“吊り橋効果”について説明しながら、ヒトの脳について考察していきます。

 

→次の記事『吊り橋効果にみる、脳の特性』

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