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吊り橋効果にみる、脳の特性

* Half way on the bridge *

『ヒトには三つの脳がある』のつづきです。

ヒトが意識してあれこれ考える時には、主に新哺乳類脳が働いている状態であり、多くのヒトは、その思考が自分の中心を成しているかのように感じています。

つまり、ヒトは、意識的な考えに基づいて理性的に行動していると考えている。

しかし実は、意識的な考えに基づいて行動しているというのは思い込みに過ぎず、無意識的な感情に基づいて行動していることがほとんどなのです。

 

前回の投稿で説明したように、旧哺乳類脳からは、いわゆる”情動”が生じます。

情動というのは、喜び、怒り、悲しみ、驚き、恐怖などの感情のことです。

「決勝戦で逆転勝ちした!」などの激しい情動のみならず、「今日は晴れていて気分がいいな」といった、軽度の感情の動きまで、ほぼ全てが旧哺乳類脳から生じているのです。

それは、意識して考えて感じるものではなく、内から沸き起こるものであり、無意識に生じるものです。

そして興味深いのは、情動が生じた時の身体の反応は、どれも似ているということです。

ヘビを見たとき、好きな人を見たとき、罵声をあびたとき、宝くじが当たったときなど、どれにおいても、心拍数や呼吸数の上昇、血圧の上昇、瞳孔は開き、手のひらや脇などが発汗し、消化器の働きは抑制されて骨格筋の働きが亢進します。(いわゆる興奮状態。交感神経優位となる)

情動による反応はみな同様ですが、今現在の状況から判断し、新哺乳類脳が「この情動は○○な状況にあることから、○○に対する喜びだ」「これは○○に対する怒りだ」などと理由付けする感じです。

 

さて、話が面白くなるのはここからです。

 

旧哺乳類脳で生じた”無意識の情動”は、新哺乳類によって”意識的な理由付け”がなされるのですが、その理由付けが、思いのほかテキトウなのです。ずさんと言ってもよいでしょう。

 

分かりやすいように、『吊り橋効果』の実験を例に挙げてみます。

18~35歳までの独身男性を集め、渓谷に架かる『揺れる吊り橋』と『揺れない橋』の2ヶ所で実験を行った。男性にはそれぞれ橋を渡ってもらい、橋の中央で若い女性が突然アンケートを求め話しかけた。その際「結果などに関心があるなら後日電話を下さい」と電話番号を教えるという事を行った。結果、吊り橋の方の男性からはほとんど電話があったのに対し揺れない橋の方からはわずか一割くらいであった[Donald G. Dutton  Arthur P. Aron]

つまり、「吊り橋で告白すると、オッケーをもらい易い」ということです。

ゆらゆらと揺れる、高い吊り橋の上では、旧哺乳類脳から恐怖の情動が生じ、心拍数が上昇してドキドキします。

すると、告白された人は「あれ?何このドキドキ。この人にドキドキしているの?この人のこと好きなのかも…」と、新哺乳類脳が「ドキドキは恋愛感情によるものだ」と理由付けをし、オッケーをもらい易くなるのです。

(※もちろん、うまくいく保証はありません)

 

このように、新哺乳類脳が勘違いすることはしばしばあります。

他にも、「あなたは今の生活がどれくらい幸福だと感じていますか?」という質問を晴れの日に行うと、雨の日に行うよりも幸福感が増すことが分かっています。質問は、”今の生活”に対してなのに、”天気”が及ぼす情動により、引きずられてしまうのです。

いらいらしている時は、ちょっとしたことで怒ってしまう、なんていうのも同じ理由です。

 

ヒトは、理由付けを行う新哺乳類脳と、情動が沸き起こる旧哺乳類脳とが別々に働いているため、全く無関係なことによって生じた情動でも、その他の事象に対しての思考や行動が左右されることがしばしばあるのです。

もちろん本人は、自分の意思で理性的に行動していると考えているのですが、些細な環境の変化によって生じた無意識の”情動(感情)”に、大きな影響を受けているのが実態のようのです。

 

→次の記事『反対されるほど燃え上がる、ロミオ&ジュリエット効果』

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