スポーツにおけるケガはさまざまです。
「コンタクトスポーツで、相手選手と接触してケガをした」といった、第三者が絡むケガもよくあります。
しかしもっと多いのが、「自分自身の(いつもやっている)動きでケガをしてしまう」というケガです。
患者さんも、「いつもやってることなのに、なんでケガしたんだろ?疲れてたのかな?」なんて疑問に思っていたりします。
今回は、それについて説明していきます。
では肩関節を簡易的に絵に描いて、どんな風にケガをするのかみてみましょう。
例えば、すばやく腕を上に挙げるとします。下図の黄色の矢印のように。
黒で描かれているのが肩甲骨と腕の骨、
そして青で描かれているのがインナーマッスル、
赤で描かれているのがアウターマッスルです。
インナーマッスルとアウターマッスルの働きで腕を上に挙げるわけですが、
正常な動作では、ほんの僅かに、インナーマッスルの方が先に働きます。
インナーマッスルが収縮することで、腕の骨の関節部(骨頭)は肩甲骨の関節面に押し付けられます。
すると、関節がしっかりとハマって安定するのです。
これはゼロコンマ何秒という世界ですが、運動神経系が無意識に行っている素晴らしく理にかなった関節運動なのです。
そしてその後に、力の強いアウターマッスルが働きます。
インナーマッスルの働きによって関節部が安定しているので、関節面がきれいに滑り、関節を動かすことができます。
しかし、インナーマッスルがしっかり働く前に、力の強いアウターマッスルが収縮してしまったらどうなるでしょう?
なんと、腕の骨がしっかりと関節面に押さえつけられていないので、関節が外れそうになります。
すると、関節を取り巻くインナーマッスルや靭帯などの組織が、切れてしまうのです。
ほんのゼロコンマ何秒という世界ですが、インナーマッスルとアウターマッスルの働く順序が誤作動をおこしてしまうだけで、大きなケガが起こることがあるのです。
一つの動作をするにも、たくさんの筋肉が協調的に(時間差や強弱などが意識的・無意識的に)働くようにできています。それらの協調性が崩れてしまうことで、「いつもと同じ動作なのに」ケガをしてしまうことがあるのです。
次回は、なぜそんなことが起きてしまうのか、もう少し掘り下げて説明していきます。
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