子どもの才能や知能を褒めると、かえってその子の成長を止めてしまうかもしれません。
心理学者キャロル・ドウェックの有名な実験があります。
学童に簡単なIQテストを受けさせた後、無作為に選んだ一部の子に対してはその知能を称賛し(以後「知能派」と表記する)、それ以外の子どもたちは努力を称賛した(以後「努力派」と表記)。
そして次のテストでは簡単なものと難解なものを選択する権利を子どもたちに与えた。すると、先のテストでの褒め方の違いが、この選択に影響を及ぼした。
「努力派」の90%は難解な道を選んだが、「知能派」の子どもの大部分は容易な方を選んだ。
次の段階では児童に選択権は与えられず、全員が極めて難解なテストを受けた。
興味深いことに、「努力派」の子どもたちはさらに努力し、あらゆる道を検討した。だが「知能派」の子どもたちは早々に諦めてしまった。
最後に、一番最初と同様の簡単なパズルが与えられた。すると、「努力派」の子どもの成績は平均して30%も上がったが、「知能派」の方は20%も落ちたのである。
この研究は、その後もさまざまな設定にて、多くの研究が行われてきましたが、すべて同様の結果が得られているようです。
人として大切なのは、おそらく「何かができること」以上に「失敗を乗り越えられるか」なのだと思います。
そしてそれを伸ばすためには、できたことを褒めるより、その過程の努力を褒めるべきなのです。
そうすれば結果的に、「やる気」や何かを成し遂げるための「忍耐力」がつく。
前回も説明したように、IQは「やる気」と大きな関係があります。
IQテストというのは、「ちょっと分からないな~」と思った時に、あと数秒考えられるかで成績が変わることがあるようです。
少し難しい問題が出た時に、「あ、この問題は無理だ」とすぐに諦めてしまえば、もう少し忍耐強く考えていれば解けたハズの問題も解けずに(解かずに!)終えてしまうでしょう。そしてその結果がIQに反映されてしまうわけです。
さらに、努力を褒めることは、一時的なテストの結果だけにはとどまりません。
どんなことにしろ、努力を続けているうちに、より努力ができるように忍耐力が上昇していくのです。
そのことに関する脳構造の変化については、まだはっきりとした確証が得られていませんが、その可能性を示す研究はいくつもあります。(おそらく変化していると思われる)
ただ、努力をした後は、「努力する能力」が疲労するらしく、一時的に努力できなくなることもあります。そこには大きな波や小さな波があり、一日の中でも、週単位でも、月単位でも、努力できる時と、そうでない時とがあるようです。
それを理解していると、「前はちゃんと頑張れたじゃない!なんで今日はできないの!?」などと叱る(というか怒る)ケースが減るのではないでしょうか。
とはいえ、そう言う僕も、子育てしていると「イラッ!」とくることは多々あるのですけどね。
少なくとも、叱るのは、褒めることの半分以下にしたいものです。
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※この記事は、
『「あなたの知能はすごい!」的な褒め方はダメ』
『子ども教育より、親教育』の一連の記事です。
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