原発や地球温暖化、政治に関する問題など、みな自分自身の見解というものを持っているでしょう。
あなたは、そういった自身の見解を否定するような情報を無視したり、頭ごなしに拒否したりしてはいないでしょうか?
米国の研究者が、死刑に最も関心が高まっていた1978年にこんな実験をしました。
被験者として、死刑の支持者と反対者を同数ずつ集めた。そしてまず、被験者の見解の強さがテストで調べられた。次に、被験者は、死刑に関するエッセイを読むように求められた。このエッセイは、死刑が犯罪を抑止するという証拠と抑止しないという証拠を示しながら慎重にバランスを取って書かれていた。そのあと、再度テストで調べると、もっぱら見解が前より強固になっていることが分かった。
まったく同じエッセイを読んでいながら、死刑支持者も、反対者も、自身の見解をより確かなものとして認識したのです。
「やっぱり私の見解は正しかった!今まで以上に確信したぞ!」と。
ここで被験者の頭の中で行われたのは、『確証バイアス』と呼ばれているものです。
これは無数の研究によって支持されてきたものですが、それは新たな発見というより、思慮深い観察者が昔から言及してきたことの証明です。
約400年前、フランシス・ベーコン卿は次のように書いています。
人間は、いったん一つの見解を受け入れてしまうと、その見解を支持しその見解に賛同するあらゆるものを引き寄せる。そして、その見解と逆の立場にある、より多くの、より重要性の高い事実があっても、なお、そういった事実を無視したり見下したりする。さもなければ、何か間違いを持ち出して脇に追いやったり拒絶したりする。こうして、自身のもつ”権威ある結論”が無傷のままでいられるようにする…
MRI画像を用いた実験により、ヒトは、自身の見解を否定するような情報を見つけると、脳の情動中枢が活性化することが分かっています。
すると、手のひらに汗をかき、瞳孔は開き、血圧が上昇し、心拍や呼吸が速まります。
簡単に説明すると、カッ!となるのです。”怒り”ですね。(ほんの僅かであるため、自覚していない人がほとんど。中には、あからさまにこの反応が出る人もいる)
そして情動中枢が活性化すると、代わりに理論的で思慮深い脳部位は沈静化してしまいます。
こんな状態では、その情報を冷静に判断することは不可能です。
そうやって、自身に都合の悪い情報に対しては、論理的に考えることをせず、嫌悪感によって跳ね除けるのです。
これを読んでいる方の多くは、「自分はそんなことはない」と感じているのではないでしょうか?
しかし、そう感じるのが大多数であり、かつ、そう感じている人でも確証バイアスは働いているという証拠も数多くあります。
つまりあなたも、自身の見解に固執して情報の選り好みをしているのです。
僕はこの確証バイアスを初めて知ったとき、はっとしました。
まさに僕は、情報の選り好みをしていたのです。僕の見解を強く否定されると、苛立ち、嫌悪感を抱きました。
否定されたのは、僕の”見解”であり、”僕自身”ではないのに。
僕の尊敬する科学者はこう言っています。
人は一貫性を大切にする。しかし、貫くべきことは、「自身の見解」などでは決してない。自身の見解に固執することのない柔軟さこそ、貫くべき信念だ。
この知識を得て以来、僕の見解を否定するような情報でも、肯定する情報でも、一呼吸置いてから読み始めるようにしました。少し油断すると、すぐに自分の都合のよいように解釈してしまいますから。
「冷静に判断をする」ということは、本当に難しいです。
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