photo by Roberto
僕が東京の接骨院に勤めていたころ、後輩のスタッフから、
「何で茶髪じゃダメなんですか?」
と聞かれたことがあります。
彼はある日、茶髪にしてきて、それを院長に注意され、僕に愚痴ってきたのです。
「ちゃんと仕事してるのに、何が悪いのか」と。
確かに、遅刻もしないし、仕事の様子も、患者さんとの接し方もちゃんとしていたと思います。
しかし、茶髪だと良くない理由も、確かにあるのです。今回の記事では、それについて考察していきます。
まず、前回記事で説明した、「外からの刺激に対しては敏感になる」というところから説明していきます。
外からの刺激に対して敏感になるのは、痛みなどの不快感でも、気持ちのよい快感でも同様です。
(※詳しくは『自分で自分にこちょこちょしてもくすぐったくない理由とは?』を参照下さい)
そしてさらに(これが今回の記事に大きく関わってきます)、
不信感を抱く人や、嫌いな人からの刺激は、不快感が大きくなり、
信頼感を抱く人や、好きな人からの刺激は、快感が大きくなるという特徴があるのです。
これは、何となく理解できるのではないでしょうか?
全く同じマッサージを、同一人物が身なりを変えて行うという実験があります。
たくさんの人を2つのグループに分けての実験です。
片方は、かなり怪しげで、不潔そうな髭と髪型と服装でマッサージを行い、
もう一方では、髭も髪も綺麗に整え、清潔感のあるパリッとした白衣でマッサージを行った。
(マッサージの時間、やり方などはどちらも同じ)
どちらのマッサージがより効果的だったと思いますか?
みなさんご想像の通り、後者の方が高評価でした。
人は、信頼感のある人からの刺激に対し、より快感が大きくなって感じます。
そして初対面の人だと、見た目でしか判断できません。おそらく後者の身なりの方が、信頼感を抱きやすいのでしょう。
(他にも、「白衣か、白衣じゃないか」という違いだけでも、白衣の方が良い効果が出やすいという報告まであります)
ではそれを踏まえて、茶髪の話をしていきます。
まず、医療従事者としては、やはり茶髪というのは一般的にそぐわないと思います。
(中には、「茶髪の先生の方がよい!」という患者さんもいるでしょうが、それは少数派だと思います)
初めて行く接骨院で、茶髪の先生が「どうしましたか?」と出てきたら、どう感じるでしょうか?
特に嫌悪感や不信感を感じない方も多いでしょうが、
おそらく、出てくる先生が茶髪だとは想像していないと思います。予想外ではあるでしょう。
この予想外な人物というのは、それだけで不信感を抱いてしまうのです。無意識に。ほんのわずかではありますが。
これは、人類の歴史、石器時代の経験から派生した心理です。
もとは、「見知らぬ人はよそ者。よそ者は病原菌や争いを持ち込んでくる可能性が高い」という記憶(遺伝子の記憶)から、【見知らぬ人には不信感を抱きやすい】という心理が生まれました。
そして予想外な人物も、見知らぬ人と同様に不信感を抱きやすいのです。
「予想外な人物」という、そのちょっとした不信感が、
全く同じ施術をしても、その施術の効果を悪くしてしまうかもしれないのです。
院長が茶髪を注意したということは、少なくとも院長は「茶髪はおかしい」と思っているのでしょう。
そしてそういう風に考える院長の接骨院には、やはり「接骨院の先生で茶髪はおかしい」と考えるような患者さんが多くなると思います。
ということは、茶髪に対する不信感が、施術の効果を悪くしてしまう可能性があるのです。
それは、その接骨院にとっても、患者さんにとっても良くありません。
だから、どんなに真面目に誠実に仕事をしていようが、茶髪は良くないのだと思います。
(※逆に、「茶髪の方が個性があってよい」と考えるような院長なら、そういう考えに同調するような患者さんが多くなる傾向にあると思うので、従業員が茶髪でもよいと思います)
ある程度は、見た目をニーズに合わせることも必要なのかもしれません。
さて次回は、僕がよく受ける質問「筋トレすると背が伸びなくなるの?」について科学的に説明していきます。