photo by Arctic Warrior
前回記事『筋トレしすぎると背が伸びなくなる、は本当?』の続き、
「成長期に筋トレして筋肉つけ過ぎて、身長が止まった人を何人も知ってるよ」
「だから、筋肉つけすぎると身長が伸びなくなるんだよ」
という誤った意見について考察していきます。
まずは、例え話から。
野球をやっているA君がいるとします。
A君は、小学生の頃はそこそこ背が高い方でした。
中学校へ入学し、部活動で筋トレを始めました。
そして筋力がついてくると同時に、身長が伸びなくなり、周りの友達から身長が追い越されていきます。
その後もA君は、パワーをつけてホームランを打ちたい!と、筋トレを続けました。
いつしかA君は、中学生にしては筋肉マッチョになり、
身長は、小学生の頃には高い方だったにも関わらず、今では小さい方になってしまいました。
上のような例は、よくある話です。
そしてそのせいで、「筋肉がつくと背が伸びなくなる」と思われているようです。
しかし実際は、「筋肉がついたから背が伸びなくなった」のではなく、「背が伸びなくなったから筋肉がついた」と考えるのが妥当です。
これは因果関係の逆転と呼ばれるもので、よくある誤謬(←ごびゅう。クリックでWikipediaへ)の1つです。
それについて詳しく説明していきます。
まず、身体の成長には、順序があります。
先に骨が成長して身長が伸びて、骨が伸びきると筋肉が大きく強く発達するようになるのです。
この、【骨の成長】から【筋肉の成長】へのシフトは、一般的には18歳くらいから起こるのですが、個人差が大きく、13歳くらいの人もいれば、20歳過ぎの人もいます。
そして、ここからがポイントです。
【骨の成長】から【筋肉の成長】へのシフトが、13〜15歳といった早い段階で起きる人は、いわゆる早熟であることが多いのです。
早熟な人は、小学生の頃は一気に身長が伸びる傾向にあります。
そして、中学生くらいから【筋肉の成長】へとシフトし、筋肉がつきやすくなるのです。
逆に、20歳くらいまでかけて身長が伸びていくようなタイプの人は、高校生になっても【骨の成長】が終わっていませんから、【筋肉の成長】へシフトしておらず、筋トレをしても筋肉がつきにくいのです。
ということは、冒頭で挙げた例を、生理学的に説明するとこうなります。
A君は早熟なので、小学生のうちに一気に身長が伸びて、小学生の頃は背が高い方でした。
しかし、中学生になると、【骨の成長】は終わり、【筋肉の成長】へとシフトしていきます。
筋トレをすれば、みるみる筋肉がついていくのですが、骨の成長はほぼ終わっているので、もうあまり身長は伸びません。
そのため、筋肉の量は友達に勝っていますが、身長では周りから追い越されていくことになります。
逆に、20歳くらいまでかけて身長が伸びるようなタイプの人(B君)はこんな感じです。
B君はゆっくり成長するタイプなので、小学生〜中学生のうちはあまり身長が高い方ではありません。
早熟の人と比較すると、全く同じ筋トレをしても【骨の成長】が終わっていませんから、なかなか筋肉がつきません。
筋肉はなかなかつきませんが、高校生になってもまだ身長が伸びていき、周りの友達に追いつき、追い越していきます。
筋肉のつき方と、身長の伸び方だけに注目して、A君とB君を比較すると、
筋肉をつけ過ぎたA君はすぐに身長が止まってしまい、
筋肉をあまりつけなかった(つかなかった)B君は、高校生になってもぐんぐん身長が伸びた。
というように見えます。
そして、誤ってこう結論付けてしまうのです。
「筋肉をつけると身長が止まる」と。
前回も書きましたが、筋トレをして、筋肉をつけたせいで身長が伸びなくなることなど、ありえません。
周りで耳にする「〇〇君って、筋肉つけたせいで身長が伸びなかったらしいよ」という話のカラクリは上記のようなものなのです。
むしろ、スポーツのトレーニングなどで骨にしっかりと刺激を与えて筋肉を増やすことで、健全な骨の成長を促すことが研究により分かっています。
なので、安心してトレーニングをしてください!でもケガには気をつけて!
さて次回は、「小学生向けのリフティング練習方法」について説明します。
ずっと前に、サッカーのリフティングに関する記事を書いたのですが、「練習方法を書く」と言ったくせに放置してしまいました。
簡単ではありますが、科学的な練習方法の一例を紹介します。
※身長に関する続き記事はこちら→『バレーボールやバスケットボールなど、ジャンプをよくする競技そすると、背が高くなるの?』