速く走るための走行フォーム、足を速くするためのトレーニング理論などは、「コーチによって全く違う」なんてこともあるくらい多岐にわたります。
そんな中、今現在もっとも科学的であろう理論をご紹介します。
これは、運動に関する科学本の良書『運動神経の科学』で紹介されていた理論で、世界トップレベルの選手の走行フォームを科学的に解析して導き出されたものです。
この走り方を学ぶだけで(筋力トレーニングや、持久力トレーニングもせずに)タイムを伸ばした選手は数多くいます。(走るのが苦手で運動会が嫌いな小学生から、全日本レベルの選手まで)
その走り方は、一言で言うなれば「体幹を使って走る」です。
走る動作において特に注目されるのが、股関節・膝関節・足関節の動きでしょう。
そのため多くの指導者は、その三つの関節を、素早く、力強く使えるようにトレーニングメニューを考えるわけです。
しかし、走る動作において忘れてはいけないのが、体幹の動きです。特に回旋(捻り)の動き。
足の動きに体幹の動きが乗算することで、無駄のない大きな推進力を得ることができるのです。
(※もちろん、腕の振り、上体の姿勢、足の使い方も重要ですが、この記事ではあまり認知されていない「体幹の動き」に焦点を当てて説明していきます)
言葉で動きを説明するのは分かり難いので、とりあえず、動画を見て違いを確かめて頂きたいと思います。
この動画は、通常の歩き方(左足のみ)と、体幹を使った歩き方(左足のみ)を比較したもので、股関節の開く角度はどちらも同じになっています。股関節が全く同じ角度で動いているにも関わらず、歩幅が大きく異なっているところに注目して下さい。
※簡易的に膝や足首の動きは表現していません。というか絵が下手ですみません。
どうでしょう。
体幹の捻り(骨盤の動き)を加えると、歩幅が大きくなることが一目瞭然だと思います。
個人差はありますが、体幹による一歩は10~12cmほどあるので、100歩で約10メートルも違ってくるわけです。
この体幹の動きは「お尻歩き」と同様の動きになります。
床に、お尻をついて足を伸ばした状態で、お尻だけで歩くのです。(是非やってみて下さい)
これは慣れるとかなり一歩を大きく、そして速く歩くことができるようになります。お尻だけで。
この、お尻歩きに使う筋肉は、脊柱起立筋や深腹筋などで、足だけで走るときにはあまり使わない筋肉です。
つまり、足だけで走る時の動力(腸腰筋、大臀筋、大腿筋群、下腿筋群など)とは別の動力になるわけです。
ということは、足の動きに、この体幹の動きをプラスして走ったなら、今までの動力に、新たな動力をプラスした形になるため、それだけ歩幅が大きくなり、速く走れることになるのです。
簡単な足し算です。
例えるなら、「今までエスカレーターの上で立ち止まっていた人が、エスカレーターの上で歩くようになった」というのと同じようなことです。
もしあなたが、エスカレーターにただ乗っているだけなら、エスカレーターの速度で動いているということです(足だけで走っているなら、あなたの身体は足の動く速度で走行しているということ)。
しかし、エスカレーターの上で歩いたとしたら、エスカレーターの速度+歩く速度となり、より速く進めることになります(足の動きに、体幹の動きを加えたとしたら、あなたの身体は足による走行速度+体幹による走行速度となり、より速く進むことになる)。
とってもシンプルで合理的な理論ではないでしょうか。
そして、この走り方の優れた点はこれだけではありません。
特に重要なポイントは「蹴り足と重心が近づくこと」でしょう。
◆蹴り足と重心が近づくとよい理由◆
「蹴り足と重心が近づく」というのは、地面についている足側に、身体の重さの中心(重心)が近づくということです。
下図を見て下さい。これは左足で身体を前方へ押し出すところを、上方から見た図です。左が普通の走り方で、右が体幹を使った走り方になります。
体幹の動きによって、重心と蹴り足が近づいているのが分かるかと思います。
これにより、前方への推進力が身体へとしっかり伝わるようになるのです。
例えば下図を見て下さい。あなたは重い荷物を前方(↑の方向)へ押し出そうとしています。
右と左、どちらが強い力を発揮できるか、簡単にイメージが湧くのではないでしょうか。
つまり、体幹の捻りを使い、重心の位置と蹴り足を近づけることで、前方への推進力が身体全体へ効果的に伝わるようになるのです。
そしてその結果、より速く走れるようになるわけです。
◆まとめ◆
- 足の動力+体幹の動力により、歩幅も大きくなり、大きな推進力を得られる。
- 蹴り足と重心が近づくことで、身体へ効果的に推進力が伝わるようになる。
体幹の捻りをうまく使えるようになれば、長距離にしろ、短距離にしろ、主にこの二つの要素によって格段に足が速くなるのです。(他にも「走行時の足の円周が大きくなることによる無駄なエネルギーの削減」や「身体全体の安定性が増すこと」などがありますが、詳しい理論を知りたい方にはこちらの本→『運動神経の科学』をおすすめします)
この記事を読むだけでは、「どう練習すればよいのか?」が分からないかと思いますが、この走り方を学ぶコツや練習法、実際に走っている様子なども、いずれ記事にしてまとめていく予定です。
(※ちなみに、『運動神経の科学』の本には、著者が考案した「走行フォーム改善マシン」を使ったトレーニングについては詳細が説明してありますが、マシン無しでの練習法についてはほとんど書いてありません)
この走り方を『運動の基本原則』に従って練習をしたなら、三週間もあれば、ほぼ間違いなく速くなります。もちろん、「やる気があれば」の話ですが。(僕自身、タイムが劇的に上がりました)
当院併設の運動教室では、フィードバックを用いながらこの走り方を徹底的に指導いたしますので、足が速くなりたい人は、是非ご参加下さい。
※初回の無料体験を利用して、「走り方の練習法だけ学ぶ」というのもアリですので、お気軽にご利用下さい。
主な参考文献→『運動神経の科学』
→運動教室へ
いわゆるナンバだよね。 早歩きくらいのペースではいいけど、走ってみると腕の使い方で悩むね。体幹の捻りのリードに使うのか、捻りと反対方向に振って(普通の振り方)捻りの拮抗として使うのか。 体幹の捻りが先で、腕は慣性で付いてくるものとするのか。 おそらく今後そのへんに触れてくれるのでしょう。楽しみ。
まさにナンバです。古武術です。
僕の指導する走り方では、みぞおちから下の回旋の拮抗として腕の振りを使います。
古武術は、転倒事故予防運動にも、いろいろと使っています♪