僕が自分自身で行っている、ゴルフの上達度研究の途中経過を紹介します。
ドライバーや、パターやアプローチの練習にしろ、ビデオでのスイング研究にしろ、
ゴルフの練習(研究)をしたら、その練習時間を記録しておき、
その練習時間の時にコースに出た際のスコアをグラフに記入する。
ということを2年ちょっと続けた結果が、上図のグラフです。
縦軸がスコア(十日町カントリークラブにて、白ティーまたは緑ティーで回った際のスコア)
横軸が練習時間です。
スコアに上下動があるのは当然ですが、そのおおよその平均値を直線(赤線)にして示すと、(今のところは)べき乗則に沿って上達しているのが分かります。
(べき乗則について詳しくはこちら→『運動の基本原則~上達度の法則「べき乗則」~』)
ゴルフを始めることにし、この実験をしようと考えたとき、
「こんな感じのグラフになるかな~?」と予測はしていましたが、こんなにキレイにはまるとは思っていませんでした。(まだまだデータ量が少ないことは否めませんが)
ちなみに、上図の色分けにも意味があります。
薄い青の部分は、ゴルフを始めて初年度
薄い紫の部分は、二年目の部分
薄い緑の部分は、三年目(今シーズン)
薄い黄の部分は、来年の部分(今のまま練習を続けると仮定して)です。
上図を見ると、僕の練習時間が年々減っていくように見えるかもしれませんが、そうではありません。
横軸の値を見て頂けると分かりますが、1、10、100、1000、10000になっています。
つまり、一年で100時間くらい練習すると、ちょうど上図の色分けのようになるのです。
ということは、毎年同じように練習を続けても、年々、グラフ横軸の進む距離は短くなるわけです。
これはつまり、「練習をすればするほど、その上達度は実感できにくくなる」ということです。
このグラフを理解すれば、今シーズン中に去年のベストスコアを破るのは難しいだろうと、冷静に、かつ悲観的にならずに予測することができます。そして、一回一回のスコアの上下動には意味がないことも分かります。
僕は、この知識が、効果的な練習を行う上でとても重要だと考え、運動を指導する上での基盤にしています。
それに関しての詳細はまた後日説明します。
ところで、十日町カントリークラブ以外でも、3回レギュラーティーにてラウンドしたことがありますが、その時のスコアはこのグラフに含めていません。
より正確なデータを得るために、条件が違うケースは『例外』として除外することにしたのです。
しかし僕はこの『例外』を使ってずるをしようと考えてしまいました。
それは、「ある調子の悪い日」のスコアをグラフに入れるか否かという選択においてです。
上図の、紫と緑の境目あたりの、急に上にドーンと突き抜けている最悪のスコア。これが無ければ、もっと美しいグラフになっていたハズ。僕の仮説の正しさを示すには、この悪いスコアはいただけない…
そこで僕は考えました。
「この日は足を怪我していて踏ん張るのも痛かったし(これは本当)、天候も悪かった(これも本当です)。これではスコアが悪くなるのも当たり前だ。よって、この日のスコアは『例外』として、グラフには入れないことにしよう」
と。
でもこれは、研究者としては絶対にやってはいけないことです。
なぜなら、もしその日、コンディションが悪くとも、運よくよいスコアを出せていたなら、僕はそれを例外として省こうとは思わなかったでしょう。つまり、結果次第で、自分の都合のよいようにデータを省いたり、付け足したりすることと同じなのです。
これは人が陥りやすい誤った思考回路です。
自分の期待や憶測、自分自身に都合の悪いことが起きると、「いや、これはたまたま起こった『例外』であって、僕の理論が揺らいだわけではないよ」などと何かと理由をでっちあげて排除しようとする(このブログの参考文献にも入れてある『ずる―嘘とごまかしの行動経済学』から学んだ)。
僕はその思考回路があることを熟知しているにも関わらず、その罠にはまるところでした。
もし『例外』を作るのなら、ラウンドを始める前に明確化し、「結果次第で、自分に都合のよいように変更する」なんてことのないようにしなければならないのです。
なので、このひどいスコアも、ちゃんとデータとして記入することにしました。
客観性を重視するのは、容易なことではありません。
運動を指導するにも、治療するにも、偏見に固執することのないよう再確認するための記事でした。