『脳を鍛える!子どもの体力づくり(1/4)』
『脳を鍛える!子どもの体力づくり(2/4)』
『脳を鍛える!子どもの体力づくり(3/4)』のつづき。
今回は最終回、
③脳とからだを鍛える、効果的な体力づくり
◆3つの運動
についてです。(講演資料↓)
効果的な運動は、主に3つです。
一つ目は【有酸素系】の運動。
ランニングやサイクリング、水泳の遠泳なんかでもよいです。
『①脳を鍛える』で説明した、脳神経の栄養であるBDNFは、ある程度心拍数を上げて、ちょっときつい運動をすることでたくさん分泌されます。(基本的には、きつければ、きついほどたくさん分泌される)
さらに、友だちと一緒だったり、親と一緒に行うことで、もっと良い効果が生じることも分かっています。
BDNFは、子どもだけでなく大人でも同様に分泌されますし、その他の脳内物質の役割によって集中力も創造力も高まることが知られています。海外では、午後の会議の前にジョギングをしてから向かう、なんて企業もあるようです。
子どもにも親にも、勉強にも仕事にもよい影響を与えるのが運動です。
ぜひお子さんと一緒にランニングしていただきたいと思います。
2つ目は【手を使う系】の運動です。
これは、『②現代っ子に足りない体力とは?』で説明した手の弱さを鍛える運動です。
おすすめするのは、逆立ちと、綱登りや棒登りです。
実は、足が速くなるにも、高くジャンプするにも、腕の強さは必要なのです。
しかし、今現在、運動の指導をしていても、足と比較すると腕が弱い子が圧倒的に多いです。全身のバランスがとれていないように感じます。
最低でも、自分の体重を自分の腕だけで支える筋力は必要ですので、ぜひ、逆立ちをやらせて欲しいと思います。
骨というのは、長軸圧の力がかかると強くなります。逆に言うと、長軸圧をかけないと、骨は弱くスカスカになってしまいます。子どもも大人も。
ちなみに、宇宙空間では重力がかからないので、宇宙飛行士は骨に長軸圧をかけることができません。そのため、骨が高齢者の骨粗鬆症(こつそしょうしょう)のようにスカスカになってしまうのです!
そういった筋骨の弱体化を防ぐため、宇宙船の中で一日に何時間もトレーニングをするのだそうです。
僕らは地球の重力がありますから、立って歩いて、走ったりするだけで足の骨には長軸圧がかかります。
しかし、いくら重力があるとしても、腕は手をつかないと長軸圧をかけることはできません。
なので、逆立ちなどをして腕の骨に長軸圧をかけて、筋肉も骨も鍛える必要があるのです。
しっかり腕にも体重をかけて、転んで手をついたくらいでは骨折しない、強い腕を育てて欲しいです。
(※逆立ちの練習方法については、また別記事にて説明することにします)
3つ目は、【バランス・複合系】の運動です。
木登りや川遊びなど、ランダムで、予測不能で、ボディバランスを必要とするような運動です。
ラットの実験で、こんな研究報告があります。
ラットを2グループに分け、一方はただ走らせ、もう一方には平均台や不安定な障害物、ゴム製のハシゴで歩くといった複雑な運動技能を教え込んだ。
2週間のトレーニングのあと、曲芸ラットはBDNFが35%も増加していたが、走るラットにはなんの変化も見られなかった。
公園にあるような、アスレチックの遊具などで遊んでいれば、楽しく、自然と身体にも心にもよい運動になるようです。
つまり、有酸素系も、複雑な動きも、どちらも同様に大切だということです。
そして、多くの子どもたちの弱点である、手の強化です。
さて、これまでの一連記事をまとめると、
1,知識を得て、意識することで運動の効果が倍増する
2,運動によってBDNFの分泌が促され、学習効果が高まる
3,リスク管理と、手の弱さを自覚する
4,有酸素系、手を使う系、バランス・複合系の運動をするのがよい
ということでした。
ちなみに、小学生にもっともおすすめのスポーツは器械体操です。
(僕が器械体操をやっていたからってわけではありません。科学的に、です)
器械体操ほど、全身をくまなく使い、柔軟性も合わせ持つ競技は他にはありません。
海外では、陸上に器械体操、サッカーに器械体操、といった感じでトレーニングに器械体操が取り入れられている地域もあるくらいです。
もちろん、器械体操でなくてもよいです。
どうしても、一つの競技に特化することを考えがちですが、
少なくとも小学生のうちは、色んなスポーツを経験する方がよいと思います。
寄り道に思えるかもしれませんが、それが、一つの競技を極める上でも糧となるはずです。
ぜひ、色んなスポーツを経験させてあげて欲しいです。
また、運動の苦手なお子さんでも、運動の良い効果を教えてあげることで、運動へのモチベーションを上げることができるかもしれません。
よろしければ、お子さんに、BDNFの話をしてみてください。
意外と食いつくかもしれません。